第4話 凍える銀と解かす夜

 瞼の奥で優しい星の光がぼやけている。星の見えない地の底に、光が降りてきてくれた。この光はきっと――


「星の神子」


 瞼を開けると、銀色の瞳が私を見つめ揺らいでいた。神子は強張っていた表情を微かにだけ緩める。冷遇の内に頬が硬くなってしまったのだろう。

「どうやってここへ、見張りは」

「髪を解き、魔力に眩んでいる間に薬を嗅がせて眠らせました」

 美しい銀糸の髪が石の床に広がっていた。砂埃に汚れてもその星の色は輝いている。

 手枷足枷はいつのまにか外されていた。神子が解いてくれたのだろう。


 神子は私の上体を起こすと、牢から連れ出した。地上へ出ると、神殿の奥に茂る森の方を示される。

「直にあなたの主たちの処刑が始まります。その隙にこの森を抜ければ、あなたなら逃げ出せるでしょう」

「私を逃したお前はどうなる」

「神官は私の血を必要としています。彼は私を殺せないでしょう」

 神子の瞳の星色が揺らめいて震えているように見えた。切り付ける間際にも見えた揺らぎだ。この男はずっと悲しんでいたのだろう。

「星の神子よ、お前はただ操り人形だったか?」

「私の血で多くが滅ぼされました。罰の理由はそれだけで充分でしょう」

 神子は自分を赦さず、これからも苦しむ道に耐えようしている。けれどただ従うだけではない。無力でも祈っている。

「星の神子」

 彼の手を取る。星の瞳を射抜くほどの強さで見上げた。


「私と来い」

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