第67話 プールに到着早速ナンパ
土曜日になりました。今日はレジャー施設で目一杯泳いで楽しむ日です。
もうピークは過ぎているはずなんだけどまだまだ人は多く、開園からまぁまぁ列ができていた。
見た感じは大学生が多いなと思う。大体の大学がもうすぐ後期授業が始まるから、その前にもう一つ楽しんでおこうといった感じかな。
俺たちも列に並び、そして開園と同時に園内へと入っていった。
あ、ちなみに入園料は三人分冬華さんが支払ってくれたよ。いつもありがとうございます。
「じゃあ隼人。早く着替えてきてね」
「おっけー」
更衣室は当然別だから一旦分かれる。
早く着替えて、とのことだけど多分俺のほうが早いんだよな。昔から思っていたけど女子の水着への着替えは脱衣から着衣までいろいろと大変そうだ。
さっさと着替え、少額のお金を入れたクリアポーチを持ってプールサイドに向かう。
割と早く着替えたつもりだったんだけど、俺より早い人はたくさんいて既にプールではかなりの人数が泳いでいた。特に流れるプールと人工波のプールは人気のようで、その二カ所だけ他のプールと比べて人が多い。
俺もプールに飛び込みたい衝動に駆られるけど、先に楽しんでしまうと後から玲奈に恨まれそうだ。大人しく待っておこう。
待ち合わせ場所かつ冬華さんが荷物を見ててくれるスペースの確保のために売店近くの日陰を確保して玲奈と冬華さんを待つ。
すると――、
「ねぇねぇおにーさん。今一人?」
右隣から声を掛けられた。
そちらに視線を向けると、多分女子大生かな? それくらいの女子二人が並んで立っているのが見えた。
これはいわゆるナンパというやつだろう。俺にナンパとは物好きもいたものだ。
興味を持ってくれたことはちょっと嬉しく思うけど、俺には玲奈がいるからなびくことはない。
「すみません一人じゃないんですよ。彼女を待っているので」
嫌味かもしれないが彼女持ちだということはしっかりアピールしておく。
さすがに彼女がいる男を誘うようなことはな……。
「彼女さんいるんですねぇ。じゃあ、彼女さんも一緒に遊びましょうよぉ」
「それいいね! どうですかおにーさん。私たちと一緒に泳ぎましょうよ」
前言撤回。この人たちなりふり構わないタイプみたいだ。
いやマジか。そもそもなんで俺なんだよ。言葉は悪いけど面倒くさい。
向こうでバカ騒ぎしている男子グループの方がぱっと見だけど顔もいいから、ナンパならあっちに行ってほしいと思うな。
「でも、待たせるなんて彼女さん酷くないですか? おにーさん大事にされてます?」
……ちょっといらっとしてしまうな。玲奈を悪く言われるのは我慢できない。
「玲奈は俺のことすごく大切に想ってくれてますよ。これ以上は困るんで」
「ほんとかなぁ? 実はおにーさんみたいにナンパされてまんざらでもなかったりするかもしれませんよぉ?」
「おにーさんも遊んでみません? 私たちが相手しますから」
一人が俺の腕を取って強引に胸の谷間へと挟み込んでくる。
施設のスタッフに言えば強制わいせつとかで警察案件に問えるんじゃないかと思うけど、そうすればせっかく今日を楽しみにしていた玲奈に申し訳ないと思うから多少強引だけど腕を振り払おうと力を込める。
と、その時、俺が動くよりも先に体が後ろへと引っ張られた。
「この人は私のものなので。勝手に触らないでもらえますか」
ナイスタイミング玲奈! 助けてくれてありがとう。
女子二人から俺を引き剥がしてくれた玲奈は、敵意すら感じる女子二人に顔を向けるとつかつかと二人に歩いていく。
そして、耳元で何かを囁くと女子二人の表情はサッと青ざめて、逃げ出すように走って行った。
「「ご、ごめんなさーい!」」
それはもう見事な逃げっぷり。
転んで怪我しないことを祈りつつ、何をしたのかちょっと気になる。
「玲奈、二人に何を?」
「世の中には知らない方がいいこともあるんだよ」
「ア、ハイ」
よく分からないがこれ以上ツッコまない方が安全な気がする。
女同士の闇のようなものを見てしまった気もするが、迷惑していたから助かったのは事実だ。これからはもっと早い段階で多少強引にでも拒絶するようにしないと。
などと思っていたら、早速というかなんというか、いつの間にか確保していたスペースに折りたたみベンチを広げていた冬華さんがトロピカルジュースとフランクフルトを用意して寝転んでいた。
「ここってクレジット使えないんだね。お札持っといてよかったー」
「いつの間に……」
「相変わらず行動早いねお姉ちゃん」
「まぁねー。それより二人とも、荷物は私が見ておくからさ。早くプールでいちゃいちゃしてきなさいな」
いちゃいちゃて。
でも、それが目的な部分もあるからお言葉に甘えることにする。
「じゃあ行こうか玲奈」
「うん!」
玲奈の手を取ってプールに向かう。
まずは流れるプールで楽しむことにして、二人で一緒に飛び込んだ。
……ん? そういえば泳ぎたいって言い出したのは冬華さんだった気が……。
なんかしてやられた気もするけど、それを考えるのは後にして水の流れに身を任せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます