第57話 お姉さん無双
荷物を置いた冬華さんが戻ってくると、さっきまで俺たちがやっていたゲームを見つけていた。
目を輝かせたかと思うと、階段を駆け上ってすぐに自分の部屋からコントローラーを持ってくる。
「ねぇ! 私もまーぜて」
そんなキラキラした顔で頼まれたら断れない。いや、俺は元から断るつもりはなかったけどさ。
ちょうど区切りのいいセーブポイントだったから、このデータは一旦ここまでにして新しく三人で遊ぶ用のデータを作ることにする。
「プレイヤーは私と隼人、お姉ちゃんとコンピューターでいいかな?」
「コンピューターいる?」
「いた方が面白いと思って」
「俺もいた方がいいと思う」
冬華さんの腕前は知らないけど、コンピューターがいたら最下位という不名誉だけは回避できると思うからな。
というわけで、そこそこの強さがあるコンピューターを含めた四人勝負で始めることになる。
「ねぇ隼人。さっきあんだけやった後で言うのもあれだけど、今は休戦しよう」
「え?」
「お姉ちゃん強いんだもん。二人で同盟結んで一緒に戦おう!」
やっぱり冬華さん強いんだ。なら、共闘しても問題なさそうだな。
「よし! というわけでここに同盟成立!」
「覚悟してよねお姉ちゃん!」
「うわずるい! そっちがその気なら手加減しないからね!」
いくら冬華さんが強いと言っても二人相手では負けるでしょ。玲奈が攻撃して俺がちまちま支援すればいい感じに流れを動かせると思う。
そして、玲奈には悪いが土壇場で裏切って今度こそ俺が一位を獲らせてもらう!
◆◆◆◆◆
そして、ゲーム開始からしばらくが経ちました。
「お二人さん? 大丈夫ですか~?」
「「……」」
俺も玲奈も冬華さんにフルボッコにされて何も言葉が出てこなかった。
いやほんとマジで冬華さん強すぎる。資産形成が上手いし妨害や攻撃が玲奈以上に正確で容赦がない。
このゲームが上手いから現実でもここまでお金持ちになれたのか、現実でお金を稼ぐ方法を知っているからこんなにこのゲームが強いのかいよいよ分からなくなってきた。
俺と玲奈の資産全部を合わせても冬華さんの資産に届かない。
「くっ! だったら有り金ないなーるカードで……!」
「はい、弁慶の防御効果が発動しまーす」
「にゃああぁぁぁぁぁぁ!!」
お助け偉人もほとんど独占されているから、戦力差も歴然。攻撃を仕掛けても弾かれるし手痛い反撃が次々飛んでくる。
「はいお返し。信長の効果で玲奈のカードを叩き割っちゃいまーす」
「あぁっ! 乗り物カードが全部なくなった!」
「鬼だ……」
「隼人くんにもほいっと。魔覚醒カード~」
「えげつないってそれは!」
なんと、俺に取り憑いていた疫病神が強制的に大厄災神に進化してしまった。
乗り物カードを使って誰かに擦り付けようと考えるけど、出た目で届く範囲には玲奈しかいない。コンピューターの場所まではちょっと届かないし、冬華さんは目的地の近くで物件を買いあさりながら俺たちに攻撃を仕掛け続けている。
助かるためには玲奈に擦り付けるしかないけど……。
「そんなことできるわけないッ!」
というわけで、逆転を狙って近くのカードマスに止まった。
「え? 私に付けたらよかったのに」
「それはさすがにマズいかなって。でもここで逆転のカードを引くのが俺!」
選ばれたカードは……ぴったりカード!
これなら場所指定だからお助け偉人に防がれることなくピンポイントで冬華さんに大厄災神を擦り付けることができる! ほら見ろ逆転のカードを引いたぞ!
「すっごい豪運……!」
「さすが隼人! 覚悟することだねお姉ちゃん!」
「次のターンが楽しみですね冬華さ……」
『グヘッヘッヘ! 俺様の故郷に招待しよう!』
大厄災神の邪魔が……故郷に招待?
なんか俺の列車が紫の光に包まれて誘拐されたんだけど。なんか別の星に連れて行かれてるんだけど。
見るも禍々しい恐怖の惑星に放り投げられた。これ、絶対にぴったりカード使えないやつじゃん最悪。
でもいいさ。地球に戻れば何かしら使える機会があるはずで……。
『グヘッヘッヘ! ようこそデストロイ星へ! 手間賃として持ち金全部とカードはすべていただこう!』
……有り金とカード全部パクられた。
どんな極悪人でももう少し手加減というものを知っているぞ。開発陣に絶対人の心を持たない人がいるって。
誘拐された辺りから冬華さんがお腹を抱えて笑い転げている。玲奈も顔を背けて肩を震わせているから、これ絶対に笑っているな。
「だから私に付ければよかったのに」
「……そうすればよかったかも」
「でも、玲奈を守ろうとする隼人くんは格好よかったよ。というわけで、はい、有り金ないなーるカード~」
「私の持ち金も全部なくなった!!」
もうボッコボコで草。
こっから逆転勝利とかもう不可能だろこれ……。
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