第6話 穏やかな朝

 翌朝も雲ひとつない快晴であった。

 朝ごはんはご飯に味噌汁、卵焼きに漬物、焼き鮭などまるで旅館のようだ。

「あー、いつもパンにカフェオレだから新鮮。最近は糖質オフのパンとかだけど」

「よくまあ、いろんなものが流行るねえ。糖質制限って、ご近所でもお米を貰ってくれなかったり、玄米のままでいいとかいろいろ言われたわ」

 大輝は嬉々として朝ごはんを食べた。やはり普通のお米は美味い。ここで英気を養って謎解きもする。それだけでもワクワクしてきた。

「さて、レポートの調べ物は涼しい午前中にして、昼間はドリルと勉強かな」

「あの家を調べるのかい? 悪いこと起きないといいけど」

 ヨシ子はまた渋い顔をした、よほど嫌なのだろう。普通に孤独死した家、しかも呪われている噂付きなんて気味悪がられるのは無理もない。

「都会じゃないのに孤独死があったのが衝撃的で。僕の時はどうなるのかなって。結婚していて家族がいてもそんな死に方するなんて不安になって」

「田舎で悪かったわね」

 友梨佳が降りてきて大輝の隣に座って朝ごはん食べ始めた。

「友梨佳、夏休みだからって夜更かしばかりするんじゃないよ。陽太はもちろん、大輝だって早起きしてばあちゃん達と朝ごはん食べてるのに。昨夜は何してたのさ」

「うーん、石の動画を見過ぎた」

「本当に友梨佳は石ばっかり。そのうち石と結婚すると言いかねないわ、せめて地質学者とか人間にしてね。イケメン石像は認めないから」

「ダメかぁ」

「じょ、冗談だよね? 漫画キャラと結婚した人がいるというけど、石像でも変態だよ」

「冗談に決まってるでひょ」

 友梨佳はご飯を頬張りながら、大輝を小突く。

「友梨佳、はしたない真似しないの! これじゃ本当に人間と結婚できないじゃないかしら」

「ばあちゃんも古いなあ、結婚が全てじゃないよ」

「そんなこと言うから少子化進むのよ」

「えっと、僕は九時くらいになったら出かけるよ」

 二人に取ってはいつものやり取りなのだろうけど、妙な方向に話が行きそうなので大輝は話を逸らした。ちなみに誠吾は黙々と食べている。慣れているのだろう。

「ちゃんと帽子被るのよ。最近はここらも暑いからね。こないだもお隣さんが畑仕事中に具合いを悪くしてたから」

 相変わらずヨシ子は心配性だ。元々、大輝の家庭環境のことで心配かけているせいもある。

「そっか、それでも僕のところより涼しいけどな」

「ちゃんと被りなよ。頭皮が日焼けすると将来禿げるって話よ」

 友梨佳は意地悪くニヤニヤと言った。少なくともこっちの祖父は髪の毛はあるからその辺の心配はしていない。最も農家は皆、帽子を被っているが。

「それとも、麦わら帽子がダサいと思ってるの? あの漫画の主人公も麦わら帽子被ってるじゃない」

「友梨佳、ちゃちゃ入れる前に食べなさい」

 ヨシ子が宥めてくれたので友梨佳は静かに食べ始めたので、大輝は落ち着いてご飯を食べることができた。

 まずは現地へ行って家の様子をぐるっと周り、光る部分が見えないか確かめて見ようと思った。誰か声をかけてきたら宿題のためと言ってついでに聞き込みができる。良くも悪くもここは田舎だ。空き家の周りに人がうろつけば目立つから声かけをしてくる。

 都会だとこうもいかないだろう。誰も寄ってこないし、聞き込みしても「付き合いないから知らない」て終わるのがオチだ。

 いきなり収穫はないだろうから、あとでネットで地元の掲示板など見て情報を集めてみよう。

 大輝はそんなことを考えながら食後の麦茶を飲むのであった。

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