第26話「満月に照らされる、幻想的な彼女からの問いかけ」
「なんのことだ? 俺たちはちゃんと付き合っているぞ?」
間髪入れず、俺はそう否定する。
見透かされていようと、関係ない。
認めなければ、あくまで村雲の勝手な推測ということにできるのだから。
幸い美麗が俺にベッタリなおかげで、疑っているのはこいつ一人だしな。
「ふふ、そうかい。まぁ、いいや」
村雲は楽しそうに笑った後、歩みを再開する。
いったい何を考えているのか。
元からわかりづらい奴ではあったが、本当に最近は何を考えているのかわからない。
「――わぁ、やっぱり綺麗だね」
外に出ると、澄んだ夜空で星々が光り輝いており、それを見た村雲が目を輝かせた。
滅多に見られない、無邪気な笑顔だ。
こう見ると、やっぱりこいつも美少女なんだよな……。
「で、話ってなんだ?」
「もう、空気を読んでくれないな~。歩きながら話そうよ」
村雲は拗ねたように目を細めると、山道を指さす。
「いや、怒られるだろ?」
「大丈夫だよ、僕と翔君なら」
おそらく、先程玄関前にいた担任のことを言っているのだろう。
俺たちが外に出ようとした際に声をかけられたのだが、村雲がせっかくだから夜空を見たいと言うと、『まぁ、村雲と神楽坂なら大丈夫か』と言っていたからな。
だけどあれは、俺たちなら、無謀なことや危険なことをしないって意味だと思う。
「
「ぬかせ」
俺はそう言って、先に歩き出す。
すると、嬉しそうに村雲が俺の後をついてきた。
「――あっ……こんなとこで、だめだよ……」
「お前が外に出たいって言ったんだろ? 安心しろよ、誰もこねぇから」
「「…………」」
少し歩くと、建物に隠れるようにして、男女らしき影がくっついていた。
おそらく俺たちには気付いていないだろう。
完全に、自分たちの世界に入っているようだ。
「馬鹿な奴っているんだな」
「しっ……聞こえるよ?」
「聞こえたところで、向こうが焦るだけだろ。あれってうちのクラスの奴らか?」
「どうだろうね? 顔までは見えないなぁ。まぁここにいると気まずくなりそうだから、もっと奥に行ってみよっか?」
確かに、今から何か始まりそうな雰囲気を感じる。
このままここで見ていたら、村雲の言う通り気まずい雰囲気になるかもしれない。
だから俺は特に抵抗せず、村雲と一緒に山道を上がっていった。
そして、ある程度上った頃――。
「ここなら邪魔が入らず、綺麗な夜空を見られそうだね?」
村雲が突然振り返り、足を止めた。
今日は満月で、月の光に照らされる彼女は少し幻想的に見える。
「まさか、結局夜空を見たくて連れ出しただけなのか?」
一人では見に行けない。
だけど、他の女子たちを連れて行こうとすれば、落ち着いて見ることができない。
だから俺を連れ出したのかもしれない――と思ったのだけど……。
「それもあるけど、ちゃんと話したいこともあるよ」
どうやら、半分正解だったようだ。
「いったい、何を話したいんだ?」
「
「――っ」
不意に出された、思いがけない名前。
俺は息を呑み、村雲の顔を見る。
村雲は人を喰ったような笑みではなく、真剣な表情で俺の目を見つめてきていた。
「ねぇ、翔君。君はもう、佳織のことは忘れたのかい?」
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます(#^^#)
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
作品フォローや評価☆☆☆を★★★にして頂けると嬉しいです(≧◇≦)
数年ぶりに新作ハイファンタジーの連載を開始しました…!
『勇者パーティーでお荷物扱いされる俺、異世界転移の力を手に入れたので転移前から夢だった動画配信者になった件~元いた世界で異世界配信をしたら大バズリして人気者になりました~』
ざまぁを含む今作ですが、
ラブコメ要素も含んでいてかわいいヒロインも登場しますので、
是非是非読んで頂けますと幸いです(≧◇≦)
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