第24話「お兄さんみたい」
「どこまでとは?」
「A? B? それともC?」
質問をしてきている女子は、ニヤニヤと興味深そうにしている。
なんというか……。
「古いな」
むしろよく知っているな、というレベルだ。
「ちゃっかり理解している翔君も、どうかと思うけど」
「そう言う村雲だって理解しているんじゃないのか?」
確かこれは、俺たちが生まれるよりもだいぶ前に流行った隠語だ。
幼かった頃、古いドラマで出てきた時に理解できず、父さんから教えてもらった記憶がある。
だから、本当に古い。
幸いなのは、美麗がぐずっていて聞いてこないことだ。
普段なら自分が知らない言葉は興味を示して聞いてくるので、そうなった場合俺は困ることになっていた。
「それで、どこまで行ったの?」
「キスすらまだしたことがない」
「えぇ!? そんなにいちゃいちゃしてて!?」
女子たちは大袈裟に驚くが、別に不思議ではないだろう。
付き合ったのだって、一週間前ということになっているのだ。
進展が早い学生もいるようだが、俺たちはゆっくり進んでいっているという設定で考えている。
「言うほどいちゃいちゃしてないだろ?」
「いや、それ」
女子は俺たちを指さしてくる。
涙目でぐずって、抱き着いてきている美麗の頭を撫でているだけなんだが?
これはいちゃいちゃではなく、慰めているだけだ。
「これくらいは普通だ」
「神楽坂君って、好きな子凄く甘やかすタイプだったんだ」
うん、どんどんと俺に関しての誤解が酷くなっていく。
だけど、表向き美麗と付き合っていることにしないといけないので、否定もできない。
「他人に興味ないと思ってたから、凄く意外」
「ねっ、正直好きな人がいたってこと自体、意外だもん」
あれ?
これは俺、喧嘩を売られてるのか?
「それだけ、有栖川嬢がかわいいということだよ。翔君があんなに甘やかすくらいにね」
女子たちを見据えていると、村雲が笑顔で意味深な視線を向けてきた。
相変わらず何か言いたそうな目だ。
ただ、こちらもボロを出すわけにはいかないので、取り合わないでおく。
「んっ……」
そうしていると、なんだか美麗が眠たそうにもぞもぞと動き始めた。
時計を見てみれば、美麗がいつも寝ている時間になっている。
「眠たくなったのか?」
「うん……」
「じゃあ、布団ひくから待ってな」
「やだ……まだあそぶ……」
友人とのお泊り会みたいだから、まだ寝たくないのだろう。
だけど、眠気には勝てない。
「二泊三日なんだから、明日も遊べるんだ。今日はもう寝なよ」
「んっ……」
頭を優しく撫でて説得すると、美麗はゆっくりと目を閉じた。
諦めてくれたらしい。
とりあえず、美麗を花巻さんにでも預けて、布団をひきたいのだけど――。
「……なんだか、お兄さんみたい」
また、女子たちが何か言いたそうに俺を見ていた。
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