第20話「無垢なアイドルからの困った質問」

「ふふ、一番一番♪」


 順位が発表された後、美麗はとてもご機嫌な様子で体を揺らしていた。

 よほど嬉しかったのだろう。


「よかったな?」

「えへへ……んっ!」


 妹のようにかわいく見えたので頭を撫でると、美麗は嬉しそうに笑みを浮かべながら頷いた。

 実妹はまなだけど、従妹の美麗も昔から妹みたいなところがある。

 同い年ではあるが、美麗の性格が子供っぽいからだろう。

 それに、甘えん坊だし。


「いちゃつく頻度が、急激に上がっていっているね」

「う、うん……凄い……」


 そして相変わらず、村雲は楽しそうに俺たちを見ており、花巻さんは顔を赤く染めている。

 あの子、さっきからずっと、変な妄想でもしてるんじゃないだろうな……?


「――神楽坂君って、あんな人だったっけ……?」

「ねっ、なんか美麗ちゃんに凄く優しいし、甘やかしまくってるよね?」

「他人に興味ない冷たい人だと思ってたけど、あんな人を虜にするなんて、やっぱり美麗ちゃんは凄いよ」


 なんだか、離れたところで固まっている女子たちが、ヒソヒソと話をしながら俺たちを見ていた。

 俺の顔をチラチラと見ているようだけど、悪口でも言っているのだろうか?


「――ふざけんな、神楽坂……! あいつだけは絶対に許さん……!」

「ふふふ……ここは山に囲まれた場所。不慮の事故が起きても、誰も怪しまねぇ……!」

「いや、お前。それは普通に人生終わるから、やめておけ」


 うん、男子共は絶対俺の悪口を言っているな。

 明らかな怨念や嫉妬の念を、あの一帯から感じる。


「まったく、ただでさえ夏になって暑いというのに、ここだけ温度が十度くらい上がってそうだよ?」

「うん、村雲。喧嘩なら買ってやるぞ?」


 ニマニマとしながら、明らかに俺たちをからかおうとしている村雲に対し、俺は冷たい目を向ける。

 しかし、それによって花巻さんがビュンッと村雲の背中に隠れてしまった。


 は、速い……。


「あ~あ、花巻さんが怯えちゃったじゃないか。君の睨み顔は普通の子には効くんだよ?」

「それは悪かったと思うが、いっさい効いてないお前は普通じゃないのか?」

「むしろ、僕が普通だとでも?」


 村雲は笑みを浮かべながら首を傾げる。

 まぁ、普通ではないな。


「あまり人を喰ったような態度を取り続けると、周りから敬遠されるぞ?」

「失礼だな、僕がこんなに絡むのなんて、君くらいだよ」

「うん、俺にもやめてくれ」


 なんだ、嫌がらせか?

 嫌がらせなのか?


「本当に、二人って仲がいいよね?」


 そんな俺と村雲のやりとりを傍で見ていた美麗が、不思議そうに俺の顔を見上げてくる。

 これのどこが、仲良く見えたのだろうか?


「まぁ、親友だからね」

「いや、ただのおと――じゃなくて、女友達か」


 危うく口を滑らせそうになったが、キザ男みたいな態度を取っているだけで、村雲は立派な女性だ。

 さすがに男友達と言うのはまずいだろう。


「翔って、他人に対して冷たいところあるけど、本人に直接容赦なく言う時って、結構心許してるよね? 本当に興味ない相手とだかと、軽くあしらって終わるもん」


 俺のことをよく知る美麗には、見ていて思うところがあったようだ。

 そのせいで、余計なことを言ってくれた。


「いや、結構あしらってるつもりだが……?」

「なんだかんだ相手にしてるし、邪魔者扱いはしてないじゃん。友達ってことは認めてるし」

「ふふ、なるほどなるほど。つまり、翔君はツンデレなのか」


 いったいどういう思考回路をしたらそうなるのか。

 とりあえず、女じゃなかったら一発ぐらい叩いているかもしれない。


「絶対ツンデレではないからな?」

「ひぃっ!?」


 俺が睨むと、怯えたのは村雲の背中に隠れていた花巻さんだった。

 や、やりづらい……。


「ん~、翔がツンデレってところは、賛成かも? 沢山甘やかしてくれるけど、素直じゃないな~ってところはあると思う」

「美麗までか!?」

「だって、絶対シスコンなのに認めないし。あんだけ愛ちゃんを溺愛できあいしてるんだから、シスコンじゃないわけないじゃん」

「ツンデレにシスコン……属性豊富だね、翔君?」


 口元に手を当て、クスクスと笑いながら村雲が俺を見てくる。

 まじで一回しばいたほうがいいかもしれない。


 ……いや、女だから手を出さないけどさぁ。


「変な噂広めたら、容赦しないからな……?」

「おっと、ホテルにでも連れ込むかい?」

「なわけないだろ……!」

「「……?」」


 村雲の発言がよくわからなかったのか、美麗と花巻さんがキョトンとした表情で首を傾げる。

 そして、美麗がクイクイッと俺の服の袖を引っ張ってきた。


「お泊りデートってこと?」

「いや、そうじゃないが……」


 高校生にもなったら知識くらいありそうだが、生憎あいにく美麗はそういったものに触れてこなかった。

 過保護な叔父さんが遠ざけていたからだ。

 多分それは、花巻さんも同じなのだと思う。


 しかし、だからといって、女子相手に俺は説明できないぞ……?


「ねぇってば」

「知りたいなら、村雲から説明してもらえ。あいつが言い出しっぺだ」

「えっ、そこは彼氏である翔君の役目じゃない? いつかは行くだろうしね?」


 うん、やっぱこいつだけは許さん。

 絶対痛い目に遭わせてやる。


 その後は、美麗の質問めにあうものの、俺は何とかしのぎきるのだった。



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【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(#^^#)


話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、

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これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

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