第14話「朝チュン?」

「――んっ……?」


 カーテンの隙間から朝日が差すようになった時間帯、小鳥のさえずりによって俺は目を覚ます。

 今回は床に布団を引いて寝たので、少し腰が痛かった。


「すぅ……すぅ……」

「……えっ?」


 息が顔にかかっている――そう思って目を開けると、なぜか目の前に美麗の寝顔があった。

 おかしい……。

 確かに、彼女は俺の部屋で寝ていた。

 しかし、俺のベッドで寝ていたはずだ。

 だから俺は、余った布団を床に敷いて寝たわけなのだし。


 しかも美麗は、ベッドに枕を置いているため、俺の腕を枕代わりにしていたようだ。


「寝ぼけて入ったのか……?」


 俺も寝起きだからか、少し頭が回っていない。

 多分トイレに行った後か水を飲みに行った後かで、戻ってきた際に俺の布団に入ってきたのだろう。

 スヤスヤ寝ているところはかわいいけれど、こんな寝顔を見せられると起こすわけにもいかない。


 そうして、起きないといけない時間まで美麗を寝かせておこうと思うと――。


「兄さん、大変です! 美麗姉さんがいませ――えっ……?」


 愛が、俺の部屋に慌てて飛び込んできた。

 うん、起こしとけばよかった……!


「兄さん、これは……?」


 愛は光を失った瞳で、ジッと俺を見下ろしてくる。

 最愛の妹が、今は凄く怖い。


「愛、これには深い事情が……」

「へぇ、深い事情? 昨晩はお楽しみだったということでしょうか?」


 ニコッと笑みを浮かべ、小首をかわいらしく傾げる愛。

 おかしいな、汗が止まらないぞ。


「お、落ち着いてくれ。やましいことは何もないから……」

「ふふ、私は至って冷静ですよ? 兄さんこそ、ダラダラと汗を流しながら動揺をされていますので、後ろめたいことがあるんじゃないですか?」


 いや、この汗はお前が怖いからだ。

 ――とはさすがにこの状況では言えず、困ったことになった。


「とりあえず、話を聞いてくれ」

「それでは、言い訳を聞こうではありませんか?」

「言い訳じゃない……!」


 明らかに疑って来ている愛に対し、俺は昨晩からのことを話した。

 もちろん、ややこしくなりそうなので、膝枕をしたことは隠したが。

 すると――。


「という言い訳ですね?」


 全然信じてもらえなかった。

 おかしいな、兄の信用が全くないぞ。


「本当のことなんだって……!」

「まぁ、服はお互い着ておられるようですし、百歩譲ってそこは信じますが……」


 百歩譲らないと信じられないのか、というツッコミは当然飲みこむ。


「もはやカップルにしか見えないのですが……?」


 確かに、美麗としていたことは、カップルがしていることだろう。

 そこは認める。

 だけど俺たちは従兄妹だし、決してやましいことはなかった。


「――うぅん……かける、なぁに? うるさいよ……?」


 愛と少し大きめな声で、言い合いをしていたからだろう。

 美麗が眠たそうに瞼を擦りながら、目を覚ました。


「美麗、お前からも愛にちゃんと説明してくれ……!」

「ん~?」


 美麗は眠たそうな目で、愛を見る。

 寝ぼけているようだ。


「説明って……昨日寝る前に、膝枕してもらったこと……?」


 そして、愛の機嫌が悪くなることを、平気でぶちこんでくれたのだった。

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