第7話
次の日、昨日の彼女が強引に私達と一緒に住むと言い出し、実行したのだ。
彼女は思いの外、私にも優しく接してくれた。
が、それは彼がいる時だけで二人の時はまさに、あの病室の時にいた時のようだった。
どちらにせよ私には害しかない。
ヤモリと話せるのは気持ち悪いだとか、勿論私の容姿のこともボロクソ言ってくるし。
後にしてその直感は正しかったのだとわかった。
私は自室に引きこもりがちになった。
そんなある時、
『よぉ、えらい久しぶりやの。元気じゃなさそうやね、ま、そりゃそうか』
その癖のある話し方は、彫刻刀だった。
「あなたここにいたの?」
『あぁ、鯨に乗るんは初めてやったから刃が冷えたで』
「しかも引っ付いてきたの?!」
『わははっ』
ガチャン
私の話声を聞いてか、彼女が私の部屋にやってきた。
「あら、あんたまだ居たの。薄汚れた彫刻刀握りしめて何をするつもり?話相手になってもらっていたのかしら」
『💢』
怒り、彼女へと飛び出そうとする彫刻刀を阻止した。
彼女は嫌みを言いに来たのだった。
「そういえば、知ってる?
あんたなんかと関わって片目を抉られた女の子。
かぁーわいい子だったのにねぇー」
「女の子?」
私はピンときたが、それは当たっていて欲しくなかった。
私と関わった女の子はコトちゃんくらいしかいない。
「何故抉られたの?」
「小さな村で生きていくのは大変なのよ、同情してあんたの醜い姿見て話してしまったら余計ね」
彼女はそれだけ言うと部屋から出ていった。
彼女は"片目"と言った。
「この眼球あげようかな」
チェーンが垂れている目を触る。
『そーしそーし、別に邪魔って訳じゃないけどな!ちょっと明るなってもいいわ!唯一の友達にあげたり!邪魔って訳じゃないけどな!』
眼球を押して隙間から出した小さな手の持ち主は賛成の声をあげた。
私は彼に訳を話した。眼球をあげたいと。
「自分が生け贄だなんて思ったことがないし、良い生活もおくれている。
だから逃げる訳じゃない、眼球を渡したらちゃんと戻ってくる」
と、言うこともしっかりと伝えた。
彼からは、一人では心配だからと白蛇と彫刻刀をお供にすることを条件に言われ、私は明日、コトちゃんの元へ行くことになった。
ここに嫁に来てから、初めての外出がこんな気が重いなんて思ってもなかった。
自分のことなら耐えられる。
私にとっての友人が私のせいで目玉を抉られたことがショックだった。
コトちゃんはもう私とは会ってくれないかも、と悪い考えが巡り、明日の準備に手間取っていた。
少し気分を落ち着かせよう、そう思い立ったがすぐに自室を後にした。
広い庭を歩いていると、ふと彼女の姿が見えた。
嫌な種に出会ってしまったなと、すぐに身を隠し引きかえした。
彼女は何やらキラリと鋭く光るものを懐に仕舞っている最中だった。
宝石かな?まあ、これ以上悪いことは何も起きないといいけど。
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