第1695話 歩け歩け

 タケルは記憶を改竄されているのでオレのことはわからないだろうが、なんの拍子に思い出すかもしれねー。修行を邪魔するのもワリーから旅の老薬師にマジカルチェンジ。モブ子とメガネさんも弟子の格好をさせた。


「これ以上、問題を起こされても図書館はなにもできんからな」


 オレが問題を起こす前提の闇の魔女さん。心外なんですけど。


「オレが問題を起こすことはねーよ」


「そうだな。お前さんは、問題を急速に解決するんだったな。そのせいで巻き込まれるこちらは堪ったもんではない」


「嫌なら断ればイイだけだ。オレは一度たりとも強制したことはねー。やるやらないもそちら次第だ」


 やりたくねー! と拒絶されたらオレはやらせたりしねーよ。


「若いクセに悪辣で強かなヤツだよ。下手な妖狐ジジイより始末が悪い」


「妖狐にしたらとんだ風評被害だな。オレが知る白髪の妖狐は可愛かったぜ」


 自由都市貿易群にいた美魔女さんね。※1115話へGO!※


「……お前さんの交遊関係はどうなっているんだ……」


「あっちこっち行ってるからな。自然と知り合いは増えるさ」


 名前は忘れてっけどな。


「よし。行くぞ」


 逃げようとする二人を結界で確保。あの二人のところに向かった。


「歩きで行くの?」


「旅の老薬師って設定だからな。歩いてこそ設定は活かされんだよ」


 オレは楽をしても役をこなせるが、二人には無理だ。苦労感を出すためにも歩かせるとしよう。この二人、体力もねーしな。


「ん? 雨とは珍しいな」


 マリンベルに来てから雨なんて降ったか? ってくらい雨に遭遇しなかった。山脈がなければ乾燥した地になっていたかもな。


 ──雨宿りしないんですか?


 雨でもフリップ芸を見せるモブ子さん。なぜかこいつとは意志疎通が取り難いんだよな? 魔眼のせいだろうか?


「常識的な方だからではないですか?」


 うん。それはオレが非常識と言ってんよね? 


「非常識な人ほど自分を常識的だとおもいますよね」


「非常識な存在に言われたくねーわ」


 誰よりも非常識な存在なクセに真理っぽいこと言ってんなや。


「このくらいの雨で泣き言吐いてんじゃねー。嵐でもねーなら進むぞ」


 傘を差すほどでもねー雨で止まってらんねーよ。歩け歩け。


 歩みの遅い二人なので小屋に着いたときは夕方になっていた。まったく、軟弱者め。


「また来たぜ。タケルたちは帰ってねーよな?」


 これで帰ってたら無駄足だぜ。


「まだよ。お風呂沸かしたから入りなさい。風邪引くよ」


 キツい性格なのか優しい性格なのかわらんヤツだ。ツンデレってヤツか?


「せっかくだから入ってきた。なんか力仕事があるならやるぞ」


 オレは結界を纏っているし、疲れてもねー。まだまだ休むには早いんだからなんかやるとしよう。


「それなら下の川まで道をよくしてよ。洗濯は川でやってんのよ」


 桃太郎の時代かよ? って、似たようなものか。結界による洗濯だったから川で洗濯とか経験ねーんだよな。てか、うちは井戸だったし。


「あ、そこまで立派なものにしなくていいからね。獣が上がって来るから」


「あいよ。任せな」


 立派なものは作らねーが、妥協はオレのプライドが許さねー。自然に優しく昇降しやすい階段を作ってしんぜよう。あらよっと!


「……あんたって本当に非常識よね……」


 暗くなるまでに階段は完成。川でコーヒーブレイクしていたら……なんだっけ? このツンデレ?


「マーブさんですよ」


 あ、そうそう。なんかサリバリとキャラ被りしてっからどうしようかと思ったぜ。 あ、サリバリは幼なじみだよ。最初に戻って読み直してね。


「こんなものでよかったか? 不満があれば作り直すぜ」


 階段のパターンはあと三つくらいある。気に入らねーなら別のにするぜ。


「これでいいわよ。今日、泊まるんでしょう? なんかリクエストがあるなら作るよ」


 へー。すっかり料理人になってんじゃんか。成長してんな。


「そうだな。魚あるから煮物を作ってくれよ」


「あんたも魚好きなのね。タケルもよく魚料理をリクエストしてたわ」


 ヘー。あいつ、魚が好きなんだ。肉ばっかり食ってるとこしか記憶にねーから肉食だと思ってたよ。タケルのこと知っているようでなんも知れてねーな、オレ。


 小屋に戻り、無限鞄に仕舞ってる魚を出した。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る