第1694話 どっちもどっち

 二人にまた来ると告げてマイカルの町に戻った。


 マイカルの町にはオレらが住む家があり、ほとんど魔女の館となっている。


 魔女とは言え、女の中で暮らすのは支障があるので、オレは外にキャンピングトレーラーを置いてそこに住んでいるよ。


「ここは、お前らの溜まり場じゃねーんだぞ?」


 見習い魔女たちがキャンピングトレーラーに集まっていた。館にお前らの部屋あんだろうがよ。


「いいでしょう。ここなら先生方が入ってくることないんだから」


 委員長さんが言うセリフじゃねーな。


「ここ、必要なもの、揃ってる」


 メスを研ぐのは止めなさい。てか、メスって勝手に研いでいいもんなのか?


 オメーらに配慮したってのによ。ったく。


 十一歳とは言え、男と一緒にいるの嫌じゃねーんだろうか? 


「べー様は珍獣ですから」


 誰が珍獣じゃい! 珍霊から言われたくねーわ! 


「どっちもどっちじゃない」


 うん。君も珍妖ってことを自覚しようね。


「どこ行ってたの? 姿が見えなかったけど」


「知り合いのところだよ。オレ、あすからしばらくいないから適当に過ごしてろな」


「そうもいかないのわかっいるでしょう。あなたから目を離すなって言われているんだから」


 お前らはオレの保護者かよ?


「監視人の間違いでは? 見てないところで大問題を巻き起こして魔女さんたちに丸投げしているんだから」


 巻き起こしているわけじゃなく巻き込まれているんだよ。そこんとこ正しく認識してください。


「ダンジョンに行くから休んでいろ。お前らじゃ足手まといだ」


 そばかすさんはダンジョン経験はあるが、これと言って役に立たなかった。他も似たり寄ったり。大人しく休日を謳歌してろや。


「そうもいかないわよ。二人はついていかないとわたしたちが怒られてしまうわ」


 大変だね。あ、オレは風呂に入って来ますね。


 風呂は館にあり、ちゃんと男湯と女湯に分かれております。

 

 一応、銭湯として経営し、マイカルの町のヤツを雇って二十四時間体制にしてあるので、夕方には混雑していた。


 まあ、混んでる銭湯もいいやろ。野郎どもの間に挟まり、汗を流して湯に浸かり、さっぱりして戻るとメガネさんとモブ子さんががっくりと項垂れていた。どったの?


「あなたについていくのはシーホーとロミナよ」


「シーホーさんがモブ子さんでロミナさんがメガネさんです」


 ハイ、ご紹介ありがとうございます。


「嫌ならついて来なくてもイイんだぞ。たぶん、危険なところだと思うからな」


 タケルの修行の場として使われてんなら魔物がいんだろう。魔眼と医学には厳しいぞ。


「ダメよ。あなたはきっと碌でもないことしかしないんだから」


 断言しなくてもイイんじゃね? オレからしら碌でも……なかったりあったり? 人生いろいろってわけさ。うんうん。


「まあ、好きにしたらイイさ。でも、しっかり準備はしておけよ」


「なんの準備?」


「覚悟だ」


 って言ったらメガネさんがさめざめと泣き出した。いや、泣くことないんじゃね?


「ここに覚悟を持って来た者なんていないわよ」


 確かに見習いに決定権はねーか。

 

「じゃあ、諦めろ」


 己の運命を受け入れて流れに乗って流されるとイイ。逆らえないのなら流れに乗るのも人生には大切なことさ。


「ううぅ」


 泣いてどうなるもんじゃねーが、泣きたいときもある。好きなだけ泣くとイイさ。


「明日のために早く寝ろよ」


 オレも早めに寝るか。最近、土木作業ばかりで魔物を相手にするのは久しぶりだ。いずれまたセーサランと出会ったときのために訓練しておくとしよう。


 また館に向かって食堂でしっかり食ったら早々にベッドに入り、お休み三秒で眠りについた。スヤスヤ~。



 ──────────────


 見習い魔女


 委員長さん-リンベルク 十六歳 回復魔法


 モブ子-シーホー 十五歳 魔眼 


 メガネさん-ロミナ 十七歳 医学 


 サダ子-ミレンダ 十四歳 解剖


 そばかすさん-ライラ 十五歳 グルメ

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