第1693話 ダンジョン都市

「おう。久しぶり。元気にしてたか~」


 外で薪割りしていた二人に声をかけたらいきなり銃を乱射されてしまった。そんな熱烈歓迎しなくてもいいんですよ。


「あっぶねーな。普通の人だったら死んでたぞ」


 メイドに撃たれてから銃弾に反応する機能を結界にプラスした。拳銃くらいじゃびくともせんわ。


「驚かせないでよ! センサー仕掛けてたのにどうやって突破したのよ!」


「ふふ。あんなものでオレの進みを止められると思うなよ。てか、あんなあからさまな場所に置いてたら意味ねーだろう」


 オレ、転生者だよ? 元の世界のものなら大体わかるよ。さらに山で狩りをして生きていた経験もある。罠くらい簡単に見つけられるわ。


「……あんたみたいなのがそうそういたら迷惑よ……」


 辛辣うぅ~。こんなヤツだったのを思い出したよ。男勝りなやっちゃ。


「お前らだけか? タケルたちはどうした?」


 庭に出ているテーブルについた。茶はどうした?


「態度のデカい客ね」


 と言いながら少年のほうがお茶を出してくれた。茶菓子も。お、このクッキーうめーじゃん。さすが料理人だ。


「船長たちはダンジョンに入っているわ」


「ダンジョン? そんなのあんの?」


 カイナが造ったのか? 


「カーチェによれば昔からあるダンジョンみたいよ。昔の古代地下都市なんだってさ」


「あー。なんかそんなこと前に聞いたな。あれ、ここなんだ」


 まだダンジョンとか地下都市とか興味なかったから冒険譚の一つとして聞いてただけだったわ。


「地下都市な~。レイコさん、なんか知ってる?」


「たぶん、アルカラ都市じゃないですかね? 箱庭は世界に結構ありますから」


「フュワール・レワロか。この世界、いろいろありすぎてなにがあっても不思議じゃねーか」


 天地逆転やらセーサランやらと、よく世界が成り立ってんなと思うことばかり。ダンジョンとか珍しくもねーか。


「タケルは成長しているか?」


「どうだろう? 優しいのは変わってないし」


「そっか。それはなによりだ」


「……随分と嬉しそうだね。あんたが旅に出させたのに……」


 そうか? オレ、嬉しそうな顔してるか?


「まあ、人の性格なんてそう変わるもんじゃねー。変わるときは死ぬくらいの衝撃を受けたときくらいだ。その死にそうな経験をしても優しくいられるんならタケルは大丈夫だ。少しずつ経験して、たくさん失敗して、大切なことを知っていけばいいんだ。それが強くなる近道なんだよ」


 特にオレたちのような転生者はそう心が折れることはねー。タケルも弱そうに見えて根はしっかりしている。あのくらいで心が折れたりはしねー。ただ、自分の弱さに参っているだけさ。


「あいつは人望がある」


「あんたと違ってね」


 それは言わない約束ですよ、お嬢さん。


「オレは一人でもやりてーことはやる。たとえすべての人が敵になろうとな。だが、タケルは人を惹きつけ、誰かに支えられて強くなるタイプだ。ああいうのが物語の主人公になったりするんだろうな~」


 そんな物語があったら読んでみてーもんだ。誰か書いてくんねーかな~?


「……あんた本当に見た目とおりの年齢なの……?」


「見てのとおりの年齢だよ。まあ、自分でも爺クセーと思うときはあるがな」


 若い心でいたいとは思うが、重ねた年月、経験の積み重ねがどうしても爺臭くしてしまうんだよな。困ったものだ。


「タケルたち、夜になったら戻ってくんのか?」


「修行だから長くは入ってるよ。今日で……何日目だっけ?」


「二十日くらいになるんじゃないかな? そろそろ買い出しに行かないとならないね」


「どこに買いに行くんだ?」


「カイナーズホームよ。転移バッチ、借りてるから」


 と、オレと同じバッチを出して見せた。それ、何個もあるヤツだっけか?


「じゃあ、また来るよ」


 さすがになにも言わずダンジョンに入ったら怒られそうだからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る