第1691話 食物連鎖
小川のせせらぎを聴きながらのマンダ○タイム。スローでリッチなライフを送っていると──。
「珍しい魔物ですね」
「そうだな。オレも初めて見る竜獣だ」
なんでこうオレの人生はスローでトラブルなライフなのだろうか? そんなにオレの前世は罪を重ねてきたのか?
「環境が変われば魔物も変わるか」
竜獣にもいくつか種類はあるが、目の前に現れたのは四肢獣型。狼っぽい竜だ。青い鱗がキレイだな。
「はぐれか?」
確か、竜獣って群れるタイプじゃなかったっけ? それもこんな人里に出て来ることはなかったはずだが?
「傷だらけだな。山になんかあったか?」
飛竜がいるし、山の生態系が崩れたのかもしれんな。メンドクセーこった。
「モブ子、倒せるか?」
ブンブンと首を振るモブ子さん。しゃーねーな。
石を拾って竜獣のド頭にぶつけてやった。
オレの全力投球に勝てるものなし、なときもあったりなかったり。ファンタジーからSFな世界になりつつあるから自信が持てなくなってきてるよ……。
「竜獣って、鱗や皮くらいしか使い道ねーから困るよな。肉食な見た目なクセに雑食だから肉がクセーんだよ。サプルですら匙を投げたっけ」
「それは酷いですね。天敵いないんですか?」
「何度かオーガが食っているところ見たな。そう上にいる魔物じゃねーみたいたぜ」
オーガも雑食だ。食えればなんでも食うんだろうよ。山は厳しいからな。
このまま放っておくのもできねーので使えそうな鱗と皮は剥がし、肉は穴を掘って埋めておいた。
「魔女さんたちに解体させなくてよかったんですか?」
「せっかく休みにしてやったんだ、野暮なことは止めておくよ」
そこまでやったら魔女さんたちに恨まれてしまうよ。
「恨まれてないと思っているところがベーよね」
「ミッチェル様。本当のこと言ったらベー様が傷ついちゃいますよ」
そのフォローが逆に傷つくよ。
「山になんかいんのか?」
そこまで嫌な予感はしねー。飛竜がいる感じもだ。そこそこのがいんのかな?
ここ一年でとんでもねーことばかり起きてっから小さいことに勘が働かなくなっている気がする。まったく困ったもんだ。
「ちょっと行ってみるか」
休みはまだまだ始まったばかり。山に狩りに行くのもイイかもな。狩りの腕もなんか鈍ってそうだからよ。
「狩り以上のことしてませんでしたか?」
「なんかしてたっけ?」
気のせいか、長いこと休んでいたような気がするんだよな。大きい出来事しか記憶にねーよ。
「ほぼ、大きい出来事しかありませんでしたけどね」
「ベーにしたら些細なことだったんでしょう」
君たち、もっと優しい声はかけられんのかね? オレだって傷つくときだってあるんだからね。クスン。
「ベーは一度心が折れたほうがいいと思う」
「そうですね。周りのために」
ふっ。すまんな。オレの心はガラス細工のように脆いが、復元力が備わってんだよ。ナメないでもらえます?
「んなことより山に行くぞ」
逃げようとするモブ子の襟をつかんで山に向かった。
中腹くらいまでなにも問題はなかったが、先ほどより二回りデカい竜獣がいた。
「なんだ、ボス争いをしてたのか。驚かせんなよな」
なんかまたトラブルかと思ったじゃねーか。
「かなり深刻なトラブルだと思いますが。五十匹はいますよ」
五十匹か。小さな群れだこと。この山、そんなに食うものがねーのか?
「もう感覚が狂ってますね」
「まあ、仕方がないわ。わたしも箱庭から出たときは弱い魔物しかいなくて驚いたものだしね」
「そうでした。ミッチェル様も非常識でしたね」
うん。君も非常識だからね。常識人ぶらないように。
「どうするんです?」
「逃がしてくれそうもねーし、ここでの食物連鎖を教えてやるか」
殺戮阿吽を抜き、強者を知らねードラゴンちゃんに恐怖を叩き込んであげましょうかかね。ククッ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます