第1690話 たぶん初夏

 フードコートで散財して帰ったら本格的にマイルカの町の復興を開始する。あらよっと!


 で、三十日があっと言う間に過ぎました。


「過程は?」


 オレの辞書に過程はなるべく省くものとすると書いてあるのだよ。てか、見てたんだから過程もなにもねーだろうがよ!


「てか、さすがに町を復興するのは大変だな。やってもやっても仕事が出てきやがるぜ」


 瓦礫は片付けられ、今は住宅を建てられるように均しているところだ。


「大変で片付けられることではないと思うのですが?」


 大変以上の言葉がなんかあるんか? 別に困難ってわけじゃねーんだしよ。


「しっかし、南は夏が早いよな」


 たぶん今は六月くらい。梅雨がねーからよく晴れてやがる。もともと今の時期は雨が少ないんだとか。水不足にならんのだろうか?


「気候的に米とか作れそうなんだがな」


 マリンベル王国でも麦は作ってんだが、そうたくさん作れる土地でもねー。マイルカは畜産や芋、トウモロコシみたいなものが主流になっている感じだ。


 不幸中の幸いか、芋とトウモロコシの畑に被害はなく、トウモロコシは夏には収穫できるそうだ。


「少し休日にするか」


 オレは結界を纏っているので暑さ寒さに強いが、他はそうはいかねー。ちゃんと休日を与えて休ませんといかんなぁ~。


 って、見習い魔女たちを見て思いました。


「魔女とは思えねー姿になったな」


 作業着に身を包み、土木作業に勤しんでおり、女として大切ななにかをなくしているようだった。


「誰のせいよ!」


 ハイ、オレのせいですね。ごめんなさ~い。


「アハハ。まあ、鍛えられてイイじゃねーか。お前らは体力も気力も雑魚だからな。もっとしぶとい精神になれ」


 ある意味、こいつらは箱入り娘だ。世間の厳しさ辛さを知らねー。土にまみれて汗水流して働くことを経験したほうがイイのさ。


「喜べ。お前たちに休日を与えてやる。半日ほどでイイか?」


「いいわけねーだろう!」


 なんて怒られました。冗談だよ。そんな殺意のある目で怒らなくてもイイじゃんか。


「べー様ならやると思われているのでしょう」


 酷いわ~。まあ、忙しいときなら半日も休みはやらんけどな!


「五日ほど休ませてやる。逃げずに集まれよ」


 集まらなかったらしばらく休日はやらんからな~。


「悪魔か」


 村人です。


「ど、どうする?」


「とりあえず、寝るわ」


「そ、そうね。今は泥のように眠りたいわ」


「わたしはカイナーズホームに行ってパフェを食べたいわ」


「わ、わたしは、解剖したい」


 まあ、好きにしたらイイさ。オレは川で汗でも流してくるかな。


 こんなイイ天気の日には川泳ぎとか洒落乙だ。


 マイルカの町には大きな川と小川がいくつかある。その一つの小川には魚が泳いでおり、腰まである深さをしていた。そこで釣りでもしながらアイスコーヒーとか最高だろう。


「なんだ、モブ子、一緒に入りてーのか?」


 残念だが、オレはツルペタに興味はねーぞ。


 と、思ってたら殴られてしまった。こ、心を読まれた!?


 ──あなたを、一人にさせるなって、命令をされているんです(筆談)。


「……可哀想に……」


 なぜかモブ子に哀愁の目を向けるメルヘンさん。いたの!? とかは今さらですから。


「べー様は目の前にいても忽然と消えるんだから止めておくほうがいいですよ」


 なんの説得だよ? まあ、否定はしねーけどよ。


「どこにもいかねーよ。モブ子も汗を流せ」


 ドン! と地面を蹴って壁を創ってやった。


「みっちょん。見張っててやんな」


 ツルペタなど誰が見るんだって思うが、お年頃な娘としては見られるのは嫌だろうからな。みっちょんに見張っててもらえや。


 オレは見られたところで恥じるものはねー。


「ウインナーのクセに」


「黙らしゃい!」


 十一歳なんだからウインナーでもイイんだよ! 


 着脱した幽霊に脱いだ上着を投げつけ、冷たい川に入った。あー気持ちイイ。

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