第1688話 教会一つください!

「……ベ、ベーくん、重いよ……」


 一撃で沈んだ分、回復が早かったそばかすさんが抗議の声を上げた。


「人は慣れる生き物だ。そのくらいの重さで嘆くな」


 オレも鍛えたいところだが、五トン以上のものってなかなかねーんだよな。あったとしても持ちにくいもんばかり。あ、結界で重力負荷をかけたらイイのか。今の今まで気付かんかったわ!


 まあ、オレの場合、スピードを鍛えたいな。力に頼りっ切りで速く動けねーんだよな。


「サダ子。どうだ?」


 いつまでもそばかすさんたちに構ってらんねーんだよ。


「もう、ちょっとで、終わる」


「狼も初めてなのにさすがだな。今度、サダ子用の包丁を作ってやるよ。竜すら捌けるヤツをな」


 竜の肉って案外硬いんだよ。名刀でもなかなか通さねー。結界で切っ先を超振動させる必要があんだよな。


「寄生虫が、いっぱい」


「とりあえず、カメラに収めておけ。今は保管する瓶がねーから寄生虫は燃やしておけ。これからカイナーズホームに行くからよ」


「医療用、メスが、欲しい」


「ん? 持ってなかったっけ?」


 前に用意してやらなかったっけ? 


「切れ味が、悪く、なった」


 まあ、いろいろかっ捌いてんしな。てか、医療用メスも切れ味悪くなったら砥石で研ぐんだろうか?


「じゃあ、サダ子も来るか? 好きなの選んでイイぞ。とりあえず百年分くらい買っておけ。魔女は長生きなんだからよ」


 なぜ魔女が長生きかは知らんが、軽く二、三百年は生きるっぽい。百年分でも少ねーだろうよ。


「他はカイナーズホームに行くか?」


「フードコートでなにか食べていい?」


 そばかすさんは本当にブレねーな。まあ、そこがイイんだがよ。


「好きなだけ食え。他はどうする?」


「ここで待っているわ。また問題に出くわしたら嫌だからね」


 メガネさんとモブ子が同意の頷きをした。カイナーズホームは問題ばかりのところだから逆になにもねーと思えるところだぞ。


「じゃあ、サダ子とそばかすさんとで行くか」


 オレの肩に手を置かせ、転移バッチ発動! カイナーズホームへ!


 で、カイナーズホームの前に出現。なんか来る度に人の出入りが増えてんな。また魔大陸から流れてきてんのか?


「よし。こっからは自由行動だ。フードコートで落ち合うとしよう。コンプライアンス──じゃなくて、コンシェルジュさん。医療用メスがあるところに連れてってくれ。代金はオレのから引いてくれ」


「畏まりました」


「そばかすさんは、フードコートに直行か?」


「お菓子買っていい?」


「あ、わたしも行く~!」


 メルヘンがパイ○ダーオフ。そして、そばかすさんの頭にパ○ルダーオン。なにもないことを祈るよ。


「あ、カレーパンがあったら買っておいてくれな」


 しょっぱいものが食いたかったが、急にカレーパンが食いたくなった。


「わかった~!」


 トラブル引寄せメーカーを見送ったらコンシェルジュさんに目を向けた。


「教会を見せてくれや」


「教会ですか? サイズはどのくらいでしょうか?」


「Sサイズで」


 教会をサイズで選んだことねーが、カイナーズホームの店員基準だと下手にLサイズにするとサグラダ・ファミリアとか売りつけられそうだからな。


「Sサイズですね。こういうのはどうでしょうか?」


「これは住むところもついてんのかい?」


 教会に異存はねー。住む場所がついているもんにするとしよう。


「それでしたら修道施設をバラで買ってはどうでしょうか? 二千円くらいのが手頃かと」


 まず価格では判断できねーが、修道施設なんて買ったことねーんだ、勧められたもんを買っておくとしよう。ダメなら他に使えばイイんだしな。


「じゃあ、それを四つくれや」


「ありがとうございました。すぐに用意致します」


 どこから引っ張り出してくるかは想像に任せます。オレは真実に目を向けられねーからサラッと流させてもらいます。

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