第1682話 牛
あとのことはアダガさんに任せ、また魔女さんのところに戻った。
「てか、死体を保管して置く場所って大図書館にあんのかい?」
かなりの数になる。ちょっとした体育館くらいのスペースがないとダメだろうよ。
「大図書館が管理している墓地に運ぼうと思う。構わないかい?」
「じゃあ、一旦そこに連れて行ってくれ。初めての場所に転移結界門は築けねーからよ。ドレミ、シュンパネあるか?」
オレは在庫ゼロです。
「はい。あります」
猫型ドレミが幼女型ドレミにトランスフォーム。シュンパネを出してくれた。
ってことで、魔女の一人とともに大図書館が管理している墓地とやらに飛んでブーリン。着いた先は山一つ墓地なところだった。
なかなか眺めがイイところであり、帝都がよく見える場所だった。
「こちらよ」
いつまでも眺めてらんない。魔女さんのあとに続き、地下に続く階段を下りた。
……オレの人生に階段はいらねーんだがな……。
百段ほど下りると、大きな空間が広がっていた。
「ここに設置してもらえる?」
説明はなしか。まあ、大図書館が管理しているところ。いろいろ秘密があんだろうと転移結界門を設置した。
「じゃあ、戻るぞ」
外に出て転移バッチでマイルカの町に戻った。
墓地に続く転移結界門を設置。結合して扉を開いた。
「よし。運ぶぞ」
オレも手伝って結界棺を大空間に運んだ。
二時間して運び入れが終了。さすがに疲れたぜ。それは魔女さんたちも同じで、地面にへばっているよ。
「お茶にするか」
最大限に結界を張り、外から見えないようにした。
まあ、作業を見られないようにはしていたが、隊商も集まってきている。念には念をで注意しておくとしよう。それ以上の存在が見てるとも限らないからな。
ドレミにお茶を淹れてもらい、お茶のおともに団子を出してやった。
「美味いな」
闇の魔女さん、団子を気に入ったようで、両手に持って食っていた。食いしん坊か。
「気に入ったのならうちのメイドに言いな。取り寄せてくれるはずだからよ」
オレはしばらく団子はイイや。今はしょっぱいものが食いてーよ。
一休みしたら瓦礫撤去に移り、魔女さんたちは撤退していった。
撤去には二日くらいかかったが、再建しやすいようにはなった。
「じゃあ、土地をいただきますか」
マイルカの町がどんなもんだったかわからねーが、主要道路は跡が残っているのでなんとなくは想像できる。
そして、町の中央部に役所的な建物。井戸や用水路も残っているので、商業区がどこかもわかる。
「この辺にするか。あらよっと」
土魔法で簡易的な家を創り出した。
井戸も破壊されているが、元に戻すことなど容易いもの。土魔法で形を築き、結界で井戸を浚って飲めるように結界フィルターを設置した。
「カイナーズホームで家を買ってくるか」
建てるのもいいんだが、そこまで時間をかけてはいられねー。やりだしたら拘るからな、オレは。
「べー様」
どんな建物にするかコーヒーを飲みながら考えていると、アダガさんとロイさんの親族さんがやってきた。
「カイさんですよ」
あ、そうそう。カイカイさんだっけな。あ、背中が痒くなった。
「アダガさんとカイさんはどこに土地が欲しい? 今なら選び放題取り放題だぜ」
「わたしは飛空船場の横に建てます。マイゼンド商会と取引します」
「へー。なにを取引するのか決まってんのかい?」
「わたしは香辛料ですね。マリンベルでは南の大陸からしか流れてこないみたいなので利益は充分出ますよ」
「マイゼンド商会からは牛肉を売らせてもらいます」
「牛? 牛なんていたのか?」
羊じゃなかったっけ?
「はい。食用ではなく農業に使っている牛ですが、アダガさんが食料肉として買ってくださるそうです」
水牛的なものか? まあ、そこから品種改良していけば旨い肉になるだろうよ。
「そいつはイイな。オレも子牛を買ってブルー島に放つかな?」
食用と乳が手に入るならうちの食卓が賑やかになるぜ。
「野生の牛もいるので捕まえてみるのもいいですよ」
おー! 野生のがいんのかよ! それなら捕まえるのもおもしろいかもな。
「あ、明日、死んだ者の葬儀をやるよ。教会のヤツは生き残っていたかい?」
マリンベルも教会が葬儀を行ってくれるはずだ。田舎だと皆が集まって土に埋めるくらいだがよ。
「います。話も通しておきました」
「カイさん、やるな。もっと仕事を与えたくなるよ」
「ほどほどにしておいてください。まずはマイルカの復興が先なんですから」
すっかりカイさんの保護者になってんな。それだけカイさんの能力を買っているってわけか。先を越されたな。
「わかったよ。マイルカのことはアダガさんに任せるよ」
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