第1679話 いつものこと

「てか、前から思ってたんだが、魔女って少なくね?」


 なんかカムラ王国でも見たような魔女が何人が見て取れた。名前? 知るわけないじゃない。顔を区別できて魔女って知っていれば充分よ。


「そんなのべーだけよ」


 ハイ、オレが困らなければそれでイイんだよ。


「闇の魔女さん。大図書館って人を増やせねーのかい?」


「無理だな。受け入れ体制もできてなければ魔女となれる人材も少ない。これが精一杯だ」


 確かに魔力がないヤツを魔女にはできんか。ファンタジーな世界とは言え、誰もが魔法や魔術を使えるわけじゃねー。それなりの基礎を学ばねーと魔法は発動しねーんだよ。


 ……オレは土魔法が最初から使えたからそこまで苦労しなかったよ。あとは、考えるな、感じろ精神で学んできたしな……。


「じゃあ、そばかすさんに勧誘してもらうか」


「お前さんは、やけにあの子に目をかけるんだね」


「まだ未熟だが、あれは逸材だ。大図書館に閉じ込めておくのは惜しい。広い世界に旅立たせるほうがイイ。それは大図書館のためにもなるぜ」


 魔女にしておくには惜しい存在でもある。譲ってもらえるならゼルフィング商会に欲しいくらいだ。


「叡知の魔女さんから預かった雛鳥だ。大図書館に返すまでには飛べるくらいには育ててやるよ。そのあとは大図書館が支えてやるんだな」


「ライラが泣きそうな顔でこっちを見ているわよ」


 おいおい。感動するのはまだ早いぜ。オレはまだなにも教えてねーんだからよ。泣くなら帰るときにしてくれよ。フッ。


「物の見事に意志疎通が取れてないわね」


 そう? オレはそばかすさんの心情が手に取るようにわかるぜ。あれはたい焼きが食べたいって顔だ。ほら、たい焼きだよ~。


 無限鞄からたい焼きとアイスを出したら突っ込んでくるそばかすさん。ほーらほら、たくさんお食べなさぁ~い。


「……ライラ、あなた……」


 オレの頭からパイルダーオフしてそばかすさんの頭にパイルダーオン。ほんと、仲がイイトラブルカモーンなコンビだよ……。


「よし。休憩終わり。死体は箱に入れる。魔女たちは髪を切ってくれ」


 この世界にも棺はあり、土葬が主だ。火葬するところもあるとは聞くが、オレはまだその場面を見たことはねー。マリンベル王国も土葬だから棺に入れてやるとしよう。


「手間ではない?」


 とは委員長さん。結構ドライなやっちゃ。


「手間を惜しむな。配慮を忘れるな。誠意を見せて町のヤツらを納得させろ。それが一番早くて最適の手段なんだからな」


 それはアダガさんたちの援護ともなる。マイルカの町を掌握するためにな。


 結界で棺を創っていき、魔女さんたちに入れてもらう。あ、最初の結界で軽くなるように設定しておりますよ。


 それでも一日では終わらず、三日ほどかかってしまったよ。


 その間、隊商は移動しなかったが、生き残りの連中も落ち着き、飛竜の姿も現れないので出発することになった。王都から次々と隊商が来てることもあるんでな。


「べー様。やってきた隊商が食料を売って欲しいと言ってきてるのですが、どうしましょうか?」


 棺を集めていると、セイワ族のメイドさんがやってきた。そういや、この町は食料調達する場所でもあったっけな。


「館の食糧庫に余裕はあるか?」


「余裕があるかはわかりませんが、常に運び入れてはおります」


「じゃあ、館から運ぶか。アダガさんはどこだ?」


「隊商の方々と話をしております」


「魔女さんたちはこのまま続けててくれ。オレはアダガさんのところに行ってくるからよ」


 暴動になっても困るからな、早めに解決しておくとしよう。


 メイドさんに案内してもらい、アダガさんのところに向かった。


 まったく。次から次へと問題が起こるぜ。いつものことじゃん、とか言われたらその通りでございます! ってしか答えられないがな!

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