第1678話 生殺与奪をいただきました!

「マジで生きてたよ」


 いや、生きているとは思ってたが、百人以上生きているとは思わんかったよ。


 それでも死んだヤツらはその数十倍。まだ死体が残るだけマシだろうよ。


「……人食い竜になったっぽいな……」


 人なんて旨いのかわからんが、人の味を気に入ったのならまた襲ってくる可能性は高いな……。


「……べーくん、疲れたよ……」


 手伝わせていたそばかすさんが根を上げてきた。


「そうだな。少し休むか」


 瓦礫はオレが片付け、死体は結界で包んで魔女さんたちに運んでもらっていたが、意外と言うか、魔女さんたち、死体にそれほど抵抗がなかった。なんでだ?


「死体、解剖、したこと、あるから」


 委員長さんにサダコ、メガネさんならわかるが、そばかすさんやモブ子まで死体解剖をするのか? 魔女の必須科目なのか?


「じゃあ、死体は大図書館に運ぶか? 結界に包んであるから腐ることはねーぞ」


「あなたは忌避しないのね? 死体解剖なんて不浄とされることなのに」


 ふーん。帝国ではそんな風に扱われてんだ。


「オレは薬師だが、人体を知らなきゃ治せねー病気はあるものだ。まあ、人を解剖する機会なんてそうはねーからゴブリンでやってたがな」


 オレの糧となってくれたゴブリンたちに感謝の合掌。君たちの命は無駄ではなかったよ。アーメンソーメン南無南無チーン。


「死んじまったもんは仕方がねー。オレらが掘り出してやらなきゃそのまま腐るだけ。なら、髪でも切って葬ってやればイイ。他は未来の命を救うために利用させてもらいます、だ」


 それで神に罰せられるなら上等だ。薬師は人を救ってなんぼの職業なんだからな。


「サダコはどんどん死体を解剖したらイイ。あんたは才能があるんだからよ」


 ちょっと精神がイッちゃっているところはあるが、解剖するのが好きってヤツはなかなかいねー。好きなら人類未来のために極めろ、だ。


「ま、任せて」


 サダコもやる気満々のようでなによりだ。


 牛乳とメロンパンを出してやり、休憩することにした。オレはコーヒーを飲ませていただきます。


「ここにいたかい」


 と、闇の魔女さんと配下の魔女さんが二人やってきた。どーしたい?


「死体を譲ってもらおうと思ってね」


「今、そんな話をしていたところさ。死体は結界に包んである。髪を一房きっとくれ。共同墓地を作って弔うからよ」


「弔うのかい?」


「そうすれば町のもんの心情を思いやっているように見えるし、死体が消えたところで文句も出ねーだろう。配慮を見せてやれば人は納得するものさ」


 大量の死体が腐るのは困るが、だからって身内や同胞の死体を雑に扱われたら怒りを感じるもの。なら、墓を作ってやり、死体は燃やしましたって言えば誰も文句は言わねーさ。


「そばかすさん。人は納得できたら大抵のことは受け入れられる生き物だ。人を信じさせたり、人を誘ったりするなら必ず納得させろ」


「その割には魔女さんたちには問答無用よね」


 あ、これはみっちょんですよ。ずっとパ○ルダーオンしたままです。


「学ぶためにオレんとこに来たんだ、いちいち許可を取ってられるか。嫌なら帰れだ」


 叡知の魔女さんも十人の見習いに大図書館の未来を託しているのだ、身にならない教えをさせたら顔向け出来ねーよ。こちらからだってヤオヨロズの未来を託して送り出してんだからな。


「ああ。見習いの生殺与奪はお前さんにやるよ。好きに育てておくれ」


「見習いさんたち、青ざめているわよ」


「大丈夫大丈夫。オレが死なせたりしねーからよ」


「べーが言うと違う意味に聞こえるから笑えないわよね」


「聞こえたまんまさ。まあ、死んだほうがマシって思わせちゃうことになったらゴメンよ」


 見習い魔女たちよ。心を強く持って学んでくれ。オレ、心を癒せる力ねーからよ。アハハ。

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