第1677話 救世の村人(笑)

 しばらくして闇の魔女さんがやってきた。


「腰の軽い魔女さんだ」


 大図書館でもかなり偉い立場だろうに、呼んですぐ来るとか優秀だぜ。


「お前さんが呼んだのなら重要な事なんだろう?」


「そうだな。闇の魔女さんの部門? の今後を左右することだからな。その練習と経験をしてもらおうと思って呼んだんだよ」


「……それは、大図書館の利になると言うことかい……?」


「それは魔女さんたちのやる気と目的次第だな。帝国の目が届かないところに実験場が一つ手に入る。そこをどうするかは大図書館が決めたらイイ。あ、このアダガさんの商会支部も築くから仲良くしてやってくれや」


「それは侵略って言わないかい?」


「捉え方は人それぞれさ。アダガさんの商会は町に根づいた商売をするからな」


 生き残った者をエイベルク商会で雇い入れ、復興したらエイベルク商会の息のかかった者を町長とする。マイルカの町さえ把握してしまえば領主なり国の官吏が来たとしても問題はねーさ。手中は我に、だ。


「そこに大図書館の協力があれば大抵の問題は片付けられるさ」


「……悪どい村人もいたものだ……」


「町の生き残りは生活を取り戻せ、アダガさんは商売繁盛。大図書館は知識と経験を手に入れられる。誰も泣かねー未来が手に入る。救世の村人と呼んでくれて構わねーぜ。ククッ」


「だったら悪そうな顔で笑うんじゃないよ」


 おっと、失礼。にっこりんこ。ってな感じでよろしいかな?


「ハァー。もう何でもよい。こちらは用意はできたよ」


 ってことなのでマイルカの町にレッツらゴー! あ、転移結界門を使いました。


「ロイさん。ワリーが仲介してくれや。食料の代金はいらねーからよ」


 アダガさんが出した食料だが、了承は得ている。アダガさんとしてもロイさんに仲介してもらったほうが話が早いしな。


「何をやろうとしているんだ?」


 懐疑的な目。こっわーい。


「商売さ。一枚噛むかい? 今ならマイルカの町の土地が手に入るぜ」


 この破壊されようなら役場は全壊したはず。土地名簿も闇の中。ここの領主や王国が控えを持っているなんてことは絶対にねーと言える。そんな細かい統治なんてやってるわけねーんだからな。


「この状態から復興なんて出来るものなのか?」


「チョー余裕だね」


 我がチートに不可能はなし。いや、我がチートはこういう状態でこそ真価を見せるのだよ。


「お前が言うとそう思えてくるから不思議だよ」


「べー様にかかれば一国を奪うことも創ることも自由自在ですよ」


「オレは一度も国を奪ったことはねーぞ。都市や領地ならいただいたことはあるがよ」


 さすがに国は奪えねーよ。


「これで村人だと言うんだから笑っちゃうでしょう?」


「まったくだ。この世のすべての村人に謝れだ」


 オレは村人の中の村人。SSSランクの村人。レベルにしたら9999。オレ以上の村人がいるなら連れて来いだ。


「わかった。前からマイルカの町に支店は置きたいと考えていた。べーの誘いに乗るとしよう」


「イイ決断だ。世界貿易ギルドの一員だ」


 うん? 世界貿易ギルドに入れたっけ? なんて言う人がいたらオレのところまで来てください。入れてなかったら修正しますんで。


「誰に言ってんのよ?」


「オレのスローライフを応援してくれている大きな友達にさ」


「べーが何を言っているのかまったくわからないわ」


「わからなくてイイんだよ。ロイさん頼むわ。アダガさんもついて行ってくれ。メイドさんたちは炊き出しの用意を頼む。魔女さんたちは怪我人の手当てを頼む。見習いどもはオレと町に行くぞ」


 飛竜に襲われて何日過ぎているかわかんねーが、この世界の住人はしぶとい。七十二時間の壁を乗り越えてんだろうよ。


「さあ、やりますかね!」


 秘技、結界瓦礫除去! まんまやーんとか言わないように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る