第1674話 マイルカの町

「どうするの?」


 パイ○ダーオンみっちょんが尋ねてきた。


「どうするとは?」


「助けないのかってことよ」


「ここは他国でオレと関係ねーところだ。まず動くべきはこの国のもんだ。オレは己の利にならんことに労力は割かんぞ」


 オレは別に正義の味方でもなけりゃー災害救助隊でもねー。利己的で我が儘。物好きではあるがお人好しではねー。この国のヤツが動かねーのに率先して動くことはしねーよ。


「助けてーならやってきていいぞ」


 薄情と思われたくねーなら助けてきたらイイ。オレは止めやしねーぜ。


「ベーがいかないんならわたしもいかないわ。楽しくないもの」


 メルヘンの判断基準は楽しいか楽しくねーかだよな。よく人の世界で生きていられるものだ。


「楽しいか楽しくないかで生きてる非常識がなにを言ってんだか」


 オレは常識が通じる世界で生きているのでなんら問題ありまセーン!


 どうなるかと見守っていると、隊商が動き出した。


 なんの通達もねーのでゼロワン改+キャンピングトレーラーに戻った。


「ベー様。どうでした?」


 マンダ○タイム中のアダガさんが尋ねてきた。


「イイ感じに町が壊滅していたよ。あれじゃ、死人もスゲーことになってかもな」


「じゃあ、次の町に行くんですかね? もう夕方ですが」


「たぶん、この町……って、なんだっけ?」


 知っている方、教えてチョンマゲ。


「マイルカの町だよ。自分がどこに行くかくらい把握しろ」


 デカいの胸だけにして欲しいものだ。まあ、ザーネルの言葉に反論できねーので黙ってますがね。


「今日はもう遅いし、マイルカの町の隊商広場で休むと思うよ。水の補給もしないといかんしな」


 これまで川はなかった。恐らくここが給水ポイントなんだろう。なら、それを無視して次に行くのは自殺行為だろうよ。


「まあ、とりあえずキャンピングトレーラーに乗れ」


 オレはゼロワン改に乗り込み、隊商のあとに続いた。


 暗くなる前に隊商広場に入ると、馬車の残骸や燃えカスが残っていた。タイミングのワリー隊商がいたものだ。


「飛竜、襲ってきますかね?」


「どうだろうな? 人を食ったのなら満腹だろうし、今は巣で寝てんじゃねーかな?」


 飛竜は山に巣を作ると親父殿が言っていた。それが正しいならあの山かな?


 遥か先に二千メートル級の山脈が見える。たぶん、あそこに巣を作ってんのかもしれんな。


 オレたちは隊商広場の隅っこに移動し、ゼロワン改からキャンピングトレーラーを外した。


 外でキャンプ場することもねーんだが、飛竜が襲ってこないとも限らねー。一応程度に見張りを立てることにした。


 まあ、見張るのはレイコさん。オレは焚き火を眺めながら夜空を楽しませていただきます。


「なんかピリピリしてるね」


 なぜかそばかすさんも外にいて、マシュマロを焼いて食べていた。君、一時間前に五人前は食べたよね? 大食いキャラは間に合っているって言ってんじゃんかよ。


「べー。少しいいか?」


 夜の八時頃にロイさんがやってきた。


「構わんよ。なんか飲むかい? 一応、酒はあるぜ」


 一緒に飲んでやれんけどな。オレ、十一歳。まだ子供で酒に弱い体質なんっすよ。


「ああ。酒をもらえるか。飲まなきゃやってられんのでな」


「魔物が町を襲ったところを見るのは初めてかい?」


「ああ。運がいいことにな」


 確かに運がいいな。十一歳のオレですら四、五回は見てんだからよ。


「マイルカの町は重要な町だったんだがな……」


「水は調達できんだろう?」


「ああ。隊商広場の井戸に被害はなかったが、食料が手に入らない。家畜も食われていたそうだ」


 なるほど。隊商としては死活問題か。


「アダガさん。売ってやったらどうだい? 王都で仕入れてんだろう?」


 買っているところは見てねーが、アダガさんなら絶対買い込んでいるはずだ。収納鞄と収納箱はキャンピングトレーラーに積んでいたから。


「目敏いですな、べー様は。まあ、商売になるなら仕方がありませんね。ロイさん。貸しですよ」


「助かる。そちらの言い値で買わせてもらうし、この借りは必ず返すよ」


「では、商談成立ってことで」


 アダガさんが手を出すと、理解したロイさんがしっかりと握手した。


 イイ商売ができてなによりだ。

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