村人転生~最強のスローライフ ニューだぜ!
タカハシあん
第1673話 バイルダーオフ
「……やっぱり、トラブルはやってきたわね……」
うん。そこはちゃんと言おうね。やってきたではなく、起こったと言うべきだよ。やってきたじゃ、オレがいたからになるじゃなーい。
「ま、まだ、トラブルとは限らない。みっちょんや、見てきておくれ」
「往生際が悪いわね」
メルヘンが往生際とか言わないの。あなたたち、ほとんど不死みたいなものじゃない。いや、メルヘンの生態は謎だけどさ。
「そうですよ。べー様に取ってトラブルの一つや二つ、なんでもないじゃないですか」
「オレ、貧しくも平穏な日々でも全然構わないんだけど」
まあ、多少なりとも変化のある毎日で、食うに困らないほうがイイが、こんな毎日トラブルは望んじゃねーんだよ。
「気になるし、見てくるわ」
ほんと、好奇心旺盛なメルヘンだよ。あ、トラブルを引き連れてくるメルヘンでもあったっけ!
いや、今回はそばかすさんはいない。大丈夫だ。オレ、信じろ!
「なにをですか?」
心の中を覗くんじゃないよ。てか、いたんかい! 存在示せや、着脱式幽霊が!
隊商が止まってしまったので、外に出て大きく伸びをし、マ○ダムタイムと洒落込んだ。イェーイ。
「なんのテンションですか?」
オレにもよーわからん。
「あ、わたしも飲みたいです」
アダガさんも出てきたのでコーヒーを淹れてやった。
「べー様って、コーヒー淹れるの上手ですよね」
「それはオレが淹れたもんじゃねーよ」
あいつが遺してくれた無限にコーヒーが出るポット。詳しく知りたい方は探してみてください。もらった時期、忘れました。
「べーくん、どうしたの?」
カラオケが飽きたのか、そばかすさんが降りてきた。
……この魔女、食うことだけじゃなく歌うのも好きみたいだよ……。
「なんかあったみたいだ」
「今度はなにをしたの?」
うん。最初からオレが原因みたいなこと言わないの。オレ、ゼロワン改を運転してたよね。ドレミみてーに分裂してトラブルを起こすなんてできねーから。
「みっちょんが──いや、そばかすさんはいくな。問題がさらに大きくなりそうだからな」
「なんだか混ぜるな危険、って言葉が浮かびました」
気のせいだから頭の中から早々に廃棄してくださいませ。幽霊は黙って背後に立ってろや。
「幽霊が黙って背後に立ってたら気味悪いじゃないですか」
それ、あなたが言っちゃダメなヤツ。てか、自覚あるんかーい!
そばかすさんにはインスタントココアを淹れてやり、みっちょんのあとを追わせないようにした。
「──べー、大変よ! 町がなくなっていたわ!」
あん? 町がなくなった? どこかに漂流しちゃったのか?
「わたし、見てくる!」
止める暇なくそばかすさんが駆けて行ってしまった。
「わたしも──」
オレの頭からバイルダーオフするメルヘンをわしっとつかんだ。
「メイドさん。留守を頼むよ。ザーネルもな」
キャンピングトレーラーから出てきたザーネルやメイドさんたちに留守をお願いし、隊商の先頭に行ってみることにした。
他の馬車からも人が降り出し、なにが起こったんだと騒いでいる。ロイさん、連絡や統制はしないのか?
「べー様。煙が上がってます」
アダガさんの声に空を見たら黒煙が昇っており、空が黒くなっていた。火事か?
「風の勇者さんたちも駆けていきましたし、魔物ですかね?」
「この流れからして飛竜だろうな」
それ以外があるなら教えて欲しいもんだわ。
「でしょうね。でも、飛竜って町を襲ったりするものなんでしょうか? 知能を持つ竜が人を食べるとか聞いたことがありません」
「それは魔大陸に生息する竜だけだろう。この大陸に出る竜は町を襲うし、人も食らうよ」
竜退治の物語なんてそこら辺に転がっている。遭遇することは珍しいが、竜が町を襲った話は大抵のヤツは聞いたことあるはずだ。
「一番竜を襲っているのはべー様という真実。皆に広めたいです」
そ、それは否定できねー。飛竜、二匹は駆ったし……。
「世は弱肉強食。強いヤツが正義だ」
こればっかりは仕方がねーことだ。この世界を支配してんのは強いヤツなんだからな。嫌なら強くなるか賢くなるしかねーんだよ。
隊商の先頭に到着すると、確かに町が消えていた。
「……酷いもんだ……」
町が滅んだところは何度か見たが、人が死ぬってところは何度経験しても慣れねーもんだぜ……。
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