物語の需要なモチーフとなっているのが変化朝顔。現代でも愛好家の多い、個性的な見た目を持つ朝顔です。それは一見して朝顔とは分からないことも。
武家の出でありながら朝顔を育てて暮らす東吾と、彼の元で奉公をすることになった謎めいた娘・清江。お互いに訳ありな二人の共同生活が始まります。やがて明らかになる清江の事情や、気楽に見えても出生に縛られている東吾、そんな彼らを取り巻く様々な家族の形。複雑に絡まり合った縁や出来事が朝顔に例えられ、見事に物語へと落とし込まれています。中でも素直に生きられない東吾と清江の姿は、まさに変化朝顔のようで……。
本人の力だけでは変えられない、「生まれ」の重みまで考えたくなる読後感でした。最後に二人は何を見出すのか。どうかじっくり味わっていただきたい作品です。