第31話 強引すぎる策謀
「はぁ、はぁ、事務所っ、着いたぁ〜」
追手を振り切り安全と言われた事務所へとやって来たレナ達。
彼女らは、テルハの活躍によって安全地帯を知る事が出来、大勢の追手を振り切る事に成功した。
荒れる息を整え、汗を拭い、シノブは事務所を見回して見る。
「一見すると、普通のオフィスのようだな」
「? ここ、誰もいないの」
「あぁ! 確かに、てか売り場にも店員さんいませんでしたよね?」
「客はいるのに、店の人間がいねぇのか、まだなんかあるって事か?」
レナはあたりを見回すと少し目を引くものがあった。
「おっ、これは、すいません、ちょっとコレ調べてみます」
「あぁ? コレはパソコンか?」
レナが触れたのはデスクの一つ、そこにあるパソコンだった。
座ったデスクには、よく見るとパスワードが付箋に書いて貼ってあるのだ。
「本来なら不用心極まりないが、こう言った状況だ。悪いがありがたい事この上ない」
シノブがそう発言するかたわら、レナはパソコンを起動しカタカタといじり始める。
「ワイファイは───繋がらないですね、ネットは使えなさそうです」
「おっ、社内ツール開けた」
色々動かしていると、モールを運営している会社の物と思われる社内のシステムにアクセス出来たのだ。
インターネットが使えない中、怪しさここに極まれりだが、触れない事にはわからないので、そのまま操作を進める。
操作を進める中、従業員の物と思われる履歴書のデータが入っていた。
それを軽く読み流していると、テルハがそれを見て何か違和感を感じたようで、言う。
「これ、変なの」
「ん? なにが?」
「これ、心なの、沢山の声が聞こえるの」
その発言が気になって履歴書を読み進めて見ると、そこには生い立ちから、モールで失踪する直前までの具体的な記録が詳細に入力されていたのだ。
それら従業員の物にとどまらず、なんと客の物まで存在していた。
そこでレナは思考をめぐらせる。
「もしかして、人間の集合意識が一種のネットワークを形成している。とか」
そうしている中、京極姉妹の三人は周囲の違和感を察知する。
「レナぁ、悪りぃが考察は一旦ストップだ」
「はい?」
次の瞬間だった。
天井からすり抜けるように複数の人影が現れたのだ。
「ぬぉぉ!! キモ!」
「客が寄らない理由がわかったぜ、管轄が違うんだなぁ」
店頭は客、事務所やバックヤードなどは従業員によって監視されている。
分割して管理しているのだ。
すると、シノブがレナを庇うように前に出て来る。
「レナっちょ先生よ、先程は力になれなかったが、ちょうどいい、名誉挽回代わりに先輩の威厳を見せてやろう」
従業員がゾンビのように突撃して来たその瞬間、シノブは唱える。
「───唱名【
そう発言すると、次々と現れる鎧のパーツが飛び交い、シノブの体に纏われていく、そうして完成したのは刺々しいデザインの女性らしいボディラインの全身鎧。
顔までヘルムで覆われその様相は特撮ヒーローの悪の戦士を彷彿とさせる。
シノブは腕を構えて武術のような構えの防御体制をとる。
次の瞬間、従業員達は獣のように、腕を振りかざす。
「闇は全てを飲み込む、貴様らの攻撃は無の果てへと帰するのだ」
従業員のパワーは人間離れしており、常人ならば容易くひしゃげるだろうしかし。
まるで、暴れる子供の手を止めるように、シノブあっさりと受け止めて見せたのだ。
鎧を包む黒色は式神が霊力で作られた四次元の暗黒空間へと繋がっており、衝撃を受けるとそれを暗黒空間へと転送して無効化してしまう。
「防御は最大の攻撃、俗物よ、闇の裁きを受けるがいい」
シノブが見せたのはキックボクシングのような中段蹴り、その瞬間だった。
まるで素通りでもしたかのように、敵二人の胴体を真っ二つにしてしまったのだ。
「おぉ、耐久アタッカータイプ! かっこいい! 嫌いじゃないです」
「フフフッ、そうであろう、そうであろう、鎧ゆえ素早さは控えめたが、パワーと防御はピカイチである!」
(それ、遅いって暴露してんじゃん、いっちゃアカンやつ)
倒れ伏す従業員を見てアトラは考える。
(コイツら、上から来たな、それに数が少ねぇ、従業員数を考えりゃ、さっきみたいに物量で押し切りゃいいのによぉ)
そうして、天井を見上げていると、一つの仮説が脳裏に閃く。
「上に、何かあんのか?」
◇
「いやぁ、我ながら強引な事しちゃったな」
場面は移ろい屋上、そこにはかつて凍河家に接触していた仮面の男、シアが変装していた人物、その本物である。
そこにあるのは、かつて少女が見つかったアメリカの心霊スポットとされる家。
「さすがに苦労したぜアメリカから直接コイツを運ぶのは、どうだいお嬢ちゃん、日本は楽しいかい?」
そこには、お姫様のドレスを着た件の少女、アンナ・オーサーその人、彼女は何も言わずにじっと仮面の男を見る。
「そうかい、そうかい、そりゃ嬉しいね」
アンナが何も答えないにも関わらず仮面の男は機嫌が良さそうに声を弾ませて答えた。
「そろそろ、気づいたかもしれない、お客様をお迎えしてあげな」
アンナは何も答えない、会釈もしない、ただ黙って姿を消した。
「いいね、いいねぇ、あんな胡散臭い組織に入った甲斐があるよ! 頑張れ学生さん達! 俺が作ったアンナちゃんはまだまだこんなもんじゃないぞぉ!!」
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