第35話 リベリヒルの皇族
その子供は私の顔寸前で止まった。え、近くない?初対面なのに、近くない?
「あの、少し」
そういって私は彼の方に手のひらを向けるようにしながら手をあげた。
「生きてるの二度目」
私の目をまっすぐ見据えながらそう呟いた。え、と声をもらせば彼は数歩後ろに下がった。彼は一度ゆっくり瞬きをする。
「え、瞳の色が」
瞬きを終えた彼の瞳の色は変わっていた。私に近づいた時の目は赤だったはずなのに、今は紫だ。それに気づけば、すぐに彼がどのような人なのかをすぐに察することができた。
「リベリヒルの皇族」
大陸の半分をも占領しているリベリヒル帝国。その皇族には数百年に一度何もかも見通す目を持ったものが生まれるという。それは男にも女にもありえること。そして、その力を使う時必ず瞳の色が変わる。リベリヒルの皇族に受け継がれる紫色の瞳から、赤に変わると力を使っている合図だと。そのような文献を昔読んだことがある。その文献が本当だとして、なぜリベリヒルの皇族がこんなところに?ましてやこれから闇オークションが行われようとしていたところに。
「そう、僕はリベリヒルの皇族。いまからこのオークション会場の闇を暴くための囮。だけど、君がこうやってみんなを逃しちゃった」
私のせいでそちらの計画が台無しになってしまったみたいだ。
「まぁ、いっか。多分もう突入している頃だし」
そう言いながらどこかを見つめた。視線の先を追えば、火事が起きているのか煙が上がっていた。それに爆発音も聞こえる。これが計画の内であれば、逃げ出していなければ私もあの火事に巻き込まれていたんじゃ。
「大丈夫、僕がそこにいないことを確認してから突入しているから」
「え、私声に出てた」
彼は私の考え事を否定する言葉を発した。だから、声に出してしまっていたのかと驚いたのだけれど。彼の瞳が変わっていく姿を見てそうではなかったことがわかった。
「あ、ごめん。勝手に覗いちゃって」
勝手に頭の中を覗かれるのはすごく嫌な感じだ。だけれど、この感じを見るに思ったように力を制御できていないのだろうか。あ、それよりも。
「この子達を家に帰えさなければ」
「それは大丈夫、カゲ」
彼が「カゲ」と言えばどこからか黒い布を身に纏った人が出てきた。
「お呼びでしょうか」
「うん、この子達を家にお願い。闇オークションの被害者だから。あ、この子はダメ。まだ少し話すから」
「カゲ」という人物に、命令を下す。その中で私の手を掴みながらそういった。いや、私は話すことないのだけれど。そう思ったのだが直様「カゲ」は行動を開始し数秒後には私以外みんないなくなってしまった。
「では、一度失礼させていただきます」
「うん、まだ必要になったら呼ぶから」
「カゲ」はまたどこかへ消えていってしまった。そして、数十秒何も離さない時間が続いた。
「お話することがないのであれば、私は従者の元へ戻りたいのですが」
「うーん、まだダメ」
気まずくて目を合わせていなかったのだが、目を見れば力を使っているようだった。何を私は見られているのだろうか。まぁでも「生きてるの二度目」って一番最初に言ったことだし、過去について見られているのだろうな。見られたくないのだけれど、どうしたらいいだろう。一度魔法を使ってみるか。魔法を打ち消すディスペルあたりを使ってみるか。使ってみたが反応がない。効果がなかったということらしい。やっぱり魔法の類ではないみたい。じゃあ結界とか?リフレクトを1回使ってみるか。
「――!」
その途端、大量の何かが見えた。私は何が何かわからないまま、流れていくそれを見ている。早く、早く、逃げ出したい。誰か、誰か助けて。そんな悲鳴が聞こえた。
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