第34話 ネプトの街で

「すごい、王都の街より賑わってるんじゃない?」


 私が街について一番最初に思ったことだ。港があるからなのか、さまざまな人種が同じところで生活している。どうしよう、いざ来たはいいけれど何をしたいかが全く思いつかない。そんな私を気にも留めずルリは楽しそうにしている。まぁ、いっか。何をしたいかなんて。楽しみながら見つければいいんだから。


「お姉ちゃん!最初にどこへ行こうか」


 何時間経っただろうか。色々な店を見て、食べてしっかり遊びまくってしまった。いや、本当に遊びすぎてしまった。もう足が重たくて動けない。


「はぁー。つかれたぁ」

「そうだね、リリ。何か飲み物を買ってくるよ。ちょっと待ってて」


 ルリはこの数時間のおかげでだいぶ自然に話せるようになってきた。もう街に着いた頃の面影がないくらいにはね。私は近くの椅子に座ってルリを待つことにした。いつの間にか日が暮れてきている。ルリが戻ってきたら、もう宿屋に戻るとしよう。


「それにしても、綺麗だなぁ」


 私は沈みゆく太陽を見ていった。キラキラと輝く海に沈んでいく太陽はとても美しくてこの世のものとは思えなかった。こういって綺麗な景色を見て過ごせるのも変わることができた、からなのかな。でもそれじゃあ、私がリリアを殺そうとしたことが正当化されている気がする。うん、きっと。時戻り前でも私がその気になればこんなことできたんだ。私がそうしなかった、それだけ。本当、勿体無い17年だったんだね。でも意味のない17年間だとは思わない。


「いろんなことがこれから、したいなぁ」


 そう夕日に目が眩みながら、つぶやいた。その次の瞬間。


「――!?」


 どこからか現れた手が私の口と胴体を捕らえた。7歳という小さな口を押さえるには大人の片手で十分だった。何も叫ぶことができないまま私は連れ去られた。






 頭がクラクラしながら私は、起き上がる。どのくらい時間が経ったか確認するものは置かれていなかった。叫ぶことができないよう猿轡をされているし、手も足も身動きが取れないようになっている。完全に人攫いだ。周りを見てみれば、同じぐらいの年頃の少年少女たちが同じような状況で捉えられていた。全て見目が整っている。身代金目当てかと思ったけれど、これはオークションか。


 助けは、きっと絶望的だ。意識を失う直前魔法を使っているのが見えたから、きっと瞬間移動したのだろう。そうなればどこまで遠くに来たのかわからない。瞬間移動を使えるのがレオン様以外にいるとは思いもしなかった。きっとこの主犯は、レオン様と同等の魔法の使い手だろう。とすれば主犯を捕まえようとするよりも、逃げて応援を呼んだ方が安全だろう。


 そうと決まれば一度認識阻害の魔法をかける。私だけじゃなくここにいる全員に。このくらい簡単だ。時戻りをしてからは、何かが用事がある日以外は絶対に魔法の練習をしていた。レオン様と出会ってからは、もう一度レオン様に教えてもらいながら訓練をしていた。そのおかげか時戻り前と同じくらいのオドの大きさになってきている。簡単には魔力切れは起こさないだろう。そしてここ一体に幻覚魔法をかけ、瞬間移動をした。場所はネプトの近くの森。成功したようで、しっかりとした土の上に降り立つことができた。幻覚魔法をかけたから、しばらくは私たちがいなくなったことに気づかないだろう。身体強化を使い手枷を引きちぎることに成功した。簡単な短剣を作り出し、猿轡と足枷も外した。それを繰り返し子供たち全員の拘束を解くことができた。


 まぁ、想像はしていたが皆拘束を解いた瞬間泣き始めてしまった。ぱっとみて、5歳から8歳ぐらいの子だ。泣くに決まっている。だけれど、一人だけその様子ただ見つめている子供がいた。視線があえば、こちらに歩み寄ってきた。


 


 







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