第3話 第三王子との出会いI

「リュシエンヌ様?本当に今日公爵様のところへ行かなくてよろしいのですか?」


 もう、朝から何度聞かれただろう。ルリは本当に私が朝食に出ないことを信じられないみたいだ。


「もう、何度も言っているでしょ。私、愛をくれない父親なんて必要ないの。ご機嫌取りなんてもうしない」

「えぇでもぉ」

「いいかげんにして?部屋から追い出すわよ」


 信じられないのだが、私は一度死に、気づいた時には時が戻っていた。寝て覚めたら意識がなくなるかもとも思ったがやっぱり目覚めは起きたので時が戻っているということは確実だろう。昨日は閣下との食事が終わった後、家庭教師の授業を受けて一日が終わった。一度学習が済んでいることをもう一度習っているから授業はとてもつまらなかった。


「本日は婚約者様との初対面です。とても綺麗に仕立てあげさせてもらいますね」

「ありがとう」


 そうだ、今日は婚約者との初対面の日だった。私の婚約者はアルフレッド・ブラッドリー。この国の第三王子だ。大変申し訳ないのだがアルフレッド王子に関しての記憶が全くないのだ。なぜならばこの国の第三王子すら放っておいて私は両親の愛を求めていたから。今回はちゃんと円満な関係を築こう。


 支度が整ったため、応接室に向かう。きっとそこにはアルフレッド王子と閣下がいるはずだ。少しでも目を閉じると時が戻る前のことを思い出す。閣下の冷たい目、何をしても無視され認められない。愛されない。そして、人を刃物で貫く感覚。全てがフラッシュバックする。実際昨日の夜もあまり寝れなかった。気が付けばすぐにその夢を見てしまうからだ。

 

「はぁ、しっかりしなきゃ。それが嫌だから私は変わるんだから」


 軽くメイクしてある頬を思いっきり叩く。


「へえぇあ!!なにしてるんですか!?」


 隣のルリがとても驚愕した声を出す。


「気合い入れたの」

「それにしてもないですよ。もっと他の気合いの入れ方ありますのにぃ。少し化粧直しさせてください」

  

 やっぱり少しメイクが崩れてしまったか。手間をかけてしまって申し訳ない。ずっと何かぶつぶつ呟いているが無視を決め込んだ。


 ルリが叫ぶから少し拍子抜けしてしまった。もう一度気合いを入れ直して私は扉を開けた。見慣れた翠色の髪と淡い紺の髪をした男の子が目に入る。私は流れるようにカーテシーをした。


 


「お初にお目にかかります。アルフレッド第三王子殿下。わたくし、リュシエンヌ・フロラインと申します。これからどうぞよろしくお願いいたします」

「頭を上げてください、リュシエンヌ嬢」


 アルフレッド王子の声で私は頭を上げた。いつの間にか閣下の近くにいたアルフレッド王子が私のすぐ近くにいた。時戻りの前はお父様に真っ先に駆け寄ったためこのようなことは起きなかった。アルフレッド王子は深い青の綺麗な瞳をしていた。初めてこんなにもじっと見たかもしれない。


「僕はアルフレッド・フォン・ブラッドリー。これから婚約者としてよろしくお願いしますね」

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