第6話 スイカ割りと荷物

英人えいと、スイカ割り対決しようぜ」

「おうよ」

 京終蒼きょうばてあお遥歌はるかの次男坊、逸歌いつかとの一騎討ちである。

「英人にスイカなんて割れるの?」

「はっ、お前こそ。ちびっこの腕力でスイカが割れるものか」

 多分、毎年恒例になるのだろうと感じさせるやりとり。新作能の発表会のあとの昼食のことである。神社の能舞台から、美大のグラウンドへ。

 逸歌は割れたスイカを持って、兄の姿を探す。

 見渡す。

 居ない。

 母の元に、駆け寄る。

「ねえ…」

 母は、ゆでた三輪そうめんを竹に流すのに忙しかった。紙皿を置いて、英人の元に戻る。

 先刻、見たばかりの劇を思い出す。


 *


 若い男は、父から呼び出された。

 父は、決まってこの季節に、隣の村まで運び物をする。しかし、父は病で臥せっている。

 私の代わりに、行ってくれるか。

 はい。

 男は、旅に出た。父から託された荷物と、腰には刀をはいて。

 男は、山道で少女に出会う。

 お待ちなさい。

 あなたさまは、この先の川を渡って行くのか。

 そうだ。

 男は大仰に首を振る。

 いけません。今すぐ、引き返しなさい。

 そうは行かぬ。

 男は、女の忠告を無視して進む。


 *


 それから、何だっけ…。

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