第2話 芹菜ちゃんは妹
「あのさあ、帯解。医学とか生物学とかのイラストなら、アメリカに専門の学校があるらしいから、そこに求人出したほうがいいよ」
「ちっ…」「うん?」
今、舌打ちが聞こえたような…。立派な机の天板の上で、指を組んであごを乗せている。視線は、壁際。
「あのね、
涙目である。何だか、最近、母親に似てきたようすの帯解である。
「解ってるよ。
ようやくこちらを向く。ほっと胸をなでおろす。
「仙台の
満面の笑み。明ちゃん、こんな子ではなかったはずなのに…。居たたまれず、窓を開けて、外を眺める。
「あっ、雨だ。なあ、帯解さあ。 前から気になってたんだけど」
「ん?」
帯解が振り返る気配がする。
「芹菜ちゃんって、帯解の何なの? 友達? 仙台なんて遠いところ…」
「いや…」がっと、肩を掴まれる。「逆に、何で、お前が知らない?」
ああ、山の霧が室内を満たしていくなあ…。
「京終の妹でもあるだろ?」
「いも…うと?」
ゆっくり首を傾げる。
「いや、いませんけど?」
眉根を寄せる。
「だから…」
帯解はホワイトボードの前に立つ。
「
ちらっと、こちらを見る。うん。頷く。
「で、
「うん、知ってる」
字を書く帯解。
「ちなみに、統が僕の母」
うんうん。こくこく頷く。帯解が再度振り返る。
「で、京終の妹が芹菜ちゃんだよ」
「待って、説明ぶっとばしてるから!」
帯解は面倒そうな顔をした。
「だから、京終が生まれた時の残りだって」
「ええっ、普通、廃棄しない? そういうの? だって、僕が生まれたのに!?」
そこで、僕は恐ろしい事実に気付いた。
「ああ…。うちの親…」
言わずもがな、
「え? だったら、芹菜ちゃんって帯解の叔母さんなの?」
「そうなるね。父親は同じだから、姉にもなるけれど」
「うわあ…。昔の貴族みたい…」
政治やら何やらで、「青き血」を守るために、スペインの幼い王子や王女って、早死にだったんだよなあ…。有名な肖像画が何枚も残っている。どこか、病弱らしい芹菜ちゃんと重なる。
「つまるところ、芹菜ちゃんとは何を目的に生まれてきたのかな?」
「だから、育ての親がね、親友のためにってやったことらしいよ」
帯解の育ての親とは、真実、僕の血の繋がった父親のことである。また、京終蒼なのか…。
「まあ、ミガクさんのことは好きだから、そのことは良かったなと思うんだけどさ。好きな人の子供が欲しいって」
ミガクさん? どこかで聞いたことがあるような気もするけど…。うちの父親と同じく、望月次実博士のことが好きだったのかな。
「ふうん…。でもさ、芹菜ちゃんを産んだ人っているはずだよね?」
そこで、帯解は肩をすくめた。
「自分が生まれる前の話なんて、知るよしもないよ」
「ですよね」
僕は、窓を閉じた。
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