蜜くんはプリンセス

神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)

第1話

「我が家のプリンセスは、みつくんだよね」

 家族で、アニメ映画を観ていて、末の弟が言った。

「いや、もうおじさんだよ? お兄ちゃん…。何なら、逸歌いつかくんのお父さんでもおかしくない年…」

「蜜くんが、うちのプリンセスだよね? ね、お父さん、お母さん!!」

 同意を求めるちびっこ。可愛い…。

「蜜くんがプリンセスだよ」

 笑顔の父。僕のこと、大好きだなあ…。

「いや、遥歌はるかさんのほうが…」

遥母はるかあさんが認めます。京終きょうばて家のプリンセスは、蜜くんです」

 真顔…。正直、対処に困る。

「知らないの、蜜くん。僕も、お母さんも習ってるから、多分、知らない人にうわーってやられて、やられっぱなしなのは蜜くんだけ…」

「うっ…」

 ちびっこからつっこまれるおじさんの空しさよ…。

「お父さんは?」

「お父さんは、大人の男の人だから大丈夫!!」

 良い顔…。遥歌さんを見る。

「うん。あおさんは思い切りと頭脳があるから平気だと思うな。でも、蜜くんは駄目そう…。最悪、逸歌なら誘拐されてもどうにかなりそうだけど、お兄ちゃんはねえ…。ねえ、逸歌?」

 ちらっ。

「僕が助けに行くよ」

 キラッキラの笑顔。うっ、眩しい。

「良かったねえ、蜜くん」

「これでいいの…?」

「いいの」

 三人が声を重ねた。

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