第6話 美人さんな駄菓子屋さん
今時の高校生に紙の本を読めと強制するのは酷だと思う。
自分で物語を書いている私でさえ、小学生の頃に読書感想文のために本を読むのはダルかった記憶がある。
あれは、読書というより作業に近かった。
感想を書く為に必要な情報をピックアップして、できるだけ、かさ増しして原稿用紙を埋める。
そんなことに楽しさを見出す学生は少ない。
小説って、私にとっては娯楽作品だから、何だかもったいなく感じる。
私が小説に親しみを感じたのは、あの夏休みだった。
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「ヒーマダナー」
小学2年生の夏休み、私はやることが無さすぎてポケモンのレベル上げをひたすらしていた。
もう全クリしていたので、意味はない。ただ指を動かすだけの作業。
楽しくもないけど、やっていて辛くもない。
「桜、今日は涼しいし外に出てみたら?」
当時、病弱だった私に気を使いすぎず、しかし、無理もさせなかったお母さんがそんな提案をした。
「えー。でも友達いないしー」
こんなに太太しいボッチも珍しい。
「お小遣い渡すから、駄菓子屋さんにでも行ってきなさい」
そう言って、お母さんは300円をくれた。
「おー!」
小学2年生にとっての300円は、大人の5万円くらいの価値がある。
一瞬で元気になった単純な私は、駄菓子屋に直行する。
300円あれば、とんでもない贅沢ができる。
とりあえず、ニンジンのやつを2こ買おう。あと、チョコのどら焼きっぽいやつ。あとあと・・・。
好きな駄菓子の名前を覚える気がない適当さは、今の私に通じるものがある。
駄菓子屋に到着した私は、最高のラインナップの駄菓子を選んでレジに持って行った。
しかし、反応がない。
いつもは、おばあちゃんがスピーディーに会計してくれるのにと目を向けたら、なんか美人さんがいた。
重そうな本を細い腕で読んでいる、黒髪ロングの女性。
「あ、えっと・・・」
あまりに自分と違いすぎる20代くらいのお姉さんに緊張しまくった私は、モソモソとしか喋れなかった。
そんな聞き取りづらい声を気づいてくれたお姉さんは、「あ、ごめんね」と上品な笑顔を向けてくれた。
ガキっぽいセレクトをそのお姉さんに見られるのは恥ずかしかったが、瞬く間に会計が終わってしまったので、やり直しができなかった。
「ありがとうございました」
私みたいなガキにしっかり敬語を使ってくれるお姉さんから逃げるように店を出た。
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仲良くなりたい。
そう思い、なんとか共通点を作ろうと、読書を始めた。
なんか、恥ずかしくなってきたから、また時間ができたら話すね。バイバイ。
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