第5話 女子にモテる女子
3駅。
家から高校までの距離だ。
こんな私も、天下の女子高生なので、少しは運動しなきゃとは思っている。
そこで、この距離だ。
徒歩はキツイけど自転車ならなんとかなりそうだ。
お母さんのおかげで好き嫌いなく育った私は、食べるのが大好きになってしまった。
特に駄菓子なんか最高だ。あれだけ美味しくてあの値段!神○○って表現は駄菓子に使うべきだと思う今日この頃。
「桜、あんた太った?」
「え!やっぱり?」
昨日の部活中、成海にそう言われた。
あの子はなんでも正直に言う子なので、他人から見ても分かるくらいに膨らんでいることを自覚するしかなかった。
「よし!」
ペダルを勢いよく踏み込む。
美味しいものを我慢しない為の戦いが、今始まる。
\
「たはは!桜可愛い!」
軽く汗をかいて学校の駐輪場に停車していると、朝練終わりの杏奈が話しかけてくる。
「何を当たり前のことを」
私が可愛いのは当然だ。
「いやそうじゃなくて、ヘルメットをちゃんと被ってるの可愛いって話」
「ん?だって、法律で決まってるじゃん」
「努力義務ね」
そうだっけ?
ああやって、条例うんぬんって言われると守らなきゃ不安になっちゃうんだよね。
「杏奈はつけてないの?」
「うん。ダサいじゃん」
「おぉ、なんてシンプルな理由なんだ。美しさすら感じる」
「馬鹿にしてんのか」
「馬鹿にはしてない」
結局、シンプルなものが一番人を惹きつけるんだ。
いつまでも立ち話をしているのもコスパが悪いので隣り合って歩き出す。
「だって、友達の中でチャリのヘルメットつけてんの桜が初めてだよ」
「まだ、その話続いてるの?」
昨日観たアニメの話がしたかったけど、無理そうだ。
「はは、本当に可愛かったからさ。勉強できないくせに真面目なんだよなーってさ」
「杏奈も似たようなもんでしょ」
「クックック」
某デキる猫さんみたいな笑い方をする友達の指摘に、私は軽い違和感を覚える。
真面目。
ルールを守っていると、そう評価される。
でも、私は自分のことをそうは思っていない。
ただ、臆病なのだ。
ルールを破ったことで生じるリスクを考えると、怖くてはみ出せない。
そんな小さい自分が嫌で、魅力的な主人公による自由な物語を書いている。
・・・とか、マジな話をするのはこのユルイ雰囲気を壊してしまうから言わない。
きっと、杏奈はこちらが真剣だと分かれば、茶化さずに聞いてくれるだろう。
でも、思ったことをポンと言うことのできる、この関係性を壊したくない。
「ていうかさ、桜って電車通学でしょ?なんで今日はチャリで来たの?」
「ダイエットですたい」
「・・・ほう」
私の身体を舐め回すように見る杏奈。
「いやいや。そんなに見るな」
私の苦情を無視して観察を続けて、ボソッと言う。
「そんなに太ってる?」
不思議そうに言う。
「前との違いが分からない」
「男子みたいな無責任なことを・・・」
こういうことをサラッと言うから女子にモテる女子になるんだと教えたろうか。
・・・まあ、良いや。
今はこの内面イケメンのセリフを間に受けてやろう。
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