「京? 何してるの?」

幼い声がし、そちらに目をやるとフィオーラが不思議そうな顔で洞窟の入り口に立っていた。

「その子、フィオのオトモダチのお人形さん。壊しちゃダメ」

「壊さねーよ。なぁ、こいつ返さねぇ?」

「ダメ。姦姦蛇螺のお人形さんは姦姦蛇螺のお人形さんだから。姦姦蛇螺泣かしたらフィオ怒っちゃう」

少女の目は思えないほどの殺気を宿した瞳に、京一瞬目を見張ったが面倒臭そうに「わかったよ」と返した。

「そーいやよ。おまえが連れて来たガキ共はどうなってんだ?」

「フィオのオトモダチは姦姦蛇螺が連れてきてくれたオトモダチと一緒にいるよ。みんなずっと一緒。オトモダチ増えてとても楽しい。嬉しい」

頬を染めながら話すフィオーラに興味なさそうに「ふーん」と返し、これからのことを考えながらふぅともう一度溜め息をついた。

「ねぇ。京」

「なんだよ」

「フィオのオトモダチ、姦姦蛇螺が連れてきた女の子と仲良し。別々寂しい?」

「俺の知ったことじゃねぇよ。あいつらはどうせ餌にしかならねぇよ。それはコイツも同じだろうけどな」

京の「餌」という言葉にフィオーラは一瞬寂しそうな目をしたが、「姦姦蛇螺が腹すかせたらかわいそうだろ?」という言葉に小さく頷いた。

「また、オトモダチ来るかな?」

「さぁな」



◆◆◆



「クッソ!! ここから出せーーー!!」

鉄格子をいくら揺らしても開かないことを知りながら空は精一杯の抵抗を見せた。

「無駄です。私もここに来て色々調べてみましたが、壁はとても厚いですし、この薄暗さといい地下では無さそうですが防空壕並みですね」

冷静に解析するしのの横でえりなは「みんな大丈夫かな?」と独り言を呟いていた。

「どうなるんだよ……おれ達……それに皆心配してるよな……」

「そうですねぇ……今頃大騒ぎになってそうですね」

「……ふたりとも! 元気して! お腹が空いてるから暗くなっちゃうんだよ? あ、パン食べる?」

どこから出したのか、えりなの手には大きなフランスパンが握られていた。

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