バンッ


「シズ! どこ行くつもりなの!? その後ふらふらの状態で!!」

「行かせて! 寝てなんていられない!!」

言い争う声のする方に視線を向けると、暴れる静夜を後ろから羽交い締めにし押さえつける明日磨がいた。

「ちょ! 何して……どういう状況なんだよ!? 兄ちゃん!!」

「あ、哉太……どうもこうもないんだよ!! シズったらまだ具合も良くないのに、森に行くって言い出して聞かないんだ!」

「嫌な気配が大きくなったんだ!! 流架兄が動けない今、僕がなんとかしなくちゃ……」

「シズ……そこまで言うなら条件として僕もついていく!」

明日磨の発言に暴れていた静夜が大人しくなり振り返って彼の顔を見る。

「分かったよ。じゃあ、準備するからアスも準備して」

「はいはい」

ふたりがコテージに戻るのを見送ると、哉太は頭をガシガシと描き、ふたり分の朝ごはんを取りに皆のもとに戻って行った。



「アス〜あれってどこに行ったっけ?」

「アレって?」

「ほら、アレだよアレ。ちょっと探してみて」

コテージの中で準備していたふたり。準備の最中に静夜が「アレ」が見当たらないと言い出して明日磨も探す。

「ねぇ。シズ……アレって一体何なんだ?」

「アス、ごめんね!!」

「え……?」

振り向いた瞬間、額に何かが貼られた感触がしたと同時にって、急激な眠気が襲い明日磨は意識が闇の中そこに沈んでいくのを感じながら目を閉じた。

「ごめんね。アス。それにしても……やっぱり流架兄の札は強力だなぁ……」

額にお札を貼り付け明日磨を眠らせた静夜は準備を終わらせると窓を開け外に出た。

「窓締めておかないと……」

窓を締め、静夜は大きく深呼吸をした後、森に向かって走り出した。

「(まだ気配は辿れる……こっちから……)」

気配を辿りながら森の中をひたすら走っていく。昨日よりも強くなっている気配に足がもつれ転びそうになりながら強くなる気配の中心へと向かった。

「ここは……うっ……」

ガンガンと頭が痛くなっていく。頭の中で警報が鳴響ている中、気持ち悪さと目眩のせいで立っていられなくなり、その場に座り込んだ。


リィン……


何処かで鈴の音が鳴った。


「あなた……とても強い霊力を持ってるわね。怖がらなくても大丈夫」

耳元で女性の声がし、女性特有のしなやかな手で頬を撫でられた後ゆっくりと視界が覆われていく。

「あ……あぁ……」

「大丈夫。大丈夫。さぁ……体の力を抜いて……身を委ねなさい」

まるで幼子に言い聞かせるような優しい声に体の力が抜けていき、静夜の意識が完全に失ったことを確認すると、その女性は静夜を抱え何処かへと姿を消した。

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