②
「なんだか雰囲気が違いますね……」
「夜の学校といい、夜の公園といい不気味だな(哉太、来なくて正解だったよ)」
「特に遊具の辺りは鬱蒼と草が生い茂っていて昼間とは全然別の世界に来た! って感じ!」
空とひまりの言葉に「そうですね」と冷静に相槌を打っていたその時、しのは少し背筋に寒気を感じた。その寒気にしのは周りをきょろきょろと見回した。すると、彼女の目にあるものが映った。それは、例の動画投稿者が失踪した森だった。
「あそこが動画投稿者失踪現場ですか……」
「この森ってさ昼は昼で気味悪いけど、夜の方がすんごく気味悪いよね〜」
しの達は森を見つめていた。森の奥を見れば見るほど街灯が少なく、不気味な雰囲気が漂っている。この墨で塗りつぶしたかのような森へ行くのか……と一瞬ためらう程だ。
「さぁ、行きましょう……!」
ようやくしの達は覚悟を決めて森の入口に足を踏み入れようとした、そんな時だ。
「こら、そこで何してるの」
突如背後から風鈴のように透き通った声が聞こえ、驚き振り向くと襟足まで伸びたふわふわの茶髪に黒縁メガネを掛けた青年と外側に跳ね上がった黒髪に赤水晶のような瞳の青年が買い物袋を片手に立っていた。
「あ、あの……」
「こんな時間に子供が出歩いていい時間じゃないよ」
空は恐る恐る話をしようとしたが声の主である黒縁メガネの青年の言葉に遮られてしまった。
「あたし達は子供じゃなくて中学生!」
「中学生もおいらからして見たら立派な子供だな!」
「失礼ね! 立派な大人料金だよ!」
「大人料金だからなんだよ!」
ひまりと黒髪の青年が口論するが、黒縁メガネの青年の言葉に遮られた。
「どうどう……なら何故こんな夜にこんなところにいる?」
ふたりの鋭い視線がしの達に刺さる。するとしのが口を開いた。
「それは……学校でここで動画投稿者が失踪した話が流行っているから、確かめに来たんです。えっと……」
「
「流架、あいつらいなくなちまったぞ?」
黒髪の青年こと五十鈴輝の指摘に、黒縁メガネの青年こと櫻木流架はしの達がいた場所を見ると、そこには誰もいなかった。
「あ……逃げられた」
「追いかけるぞ!」
「よし!」
『ダメ……行っちゃダメ……』
「え?」
脳内に直接、言葉が流し込まれるような感覚を流架は覚えた。それは森を行っては行けないという警告に聞こえる。
「……何だ?」
それを素直に受け止めるには、あまりにそれは唐突過ぎる。流架は声の主を探すかのように辺りをキョロキョロと見回した。
「流架ー! 何してんだよ、 あいつら見失っちまうよ!」
「あ、うん! 今行く!(気のせいか……?)」
輝の呼ぶ声が聞こえてきた。その声で我に帰った彼は、森の入り口に先行していた輝を追う形で、しの達が行った森の方へ向かって小走りで向かっていく。
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