①
「ねえねえ。知ってる? 中央公園のニュース」
「知ってる知ってる! 動画投稿者謎の失踪の怪事件!!」
外ではセミが大合唱する中、もうすぐ夏休みがあと数日で始まる。ここ私立神明学園中等部の教室ではスマホを片手に話をするクラスメイト達を横目に藍色の前下がりボブに後ろに赤いリボンを結っている少女、
「ねえ! 蝶野さんはどう思う?」
「どう思うとは?」
「怪事件よ! 怪事件! 蝶野さんこういう話好きでしょ?」
「それは……興味はなくはないですけど……」
いきなり話を振られ戸惑いながらも返事をするが、彼女の内心はワクワクと胸を躍らせるほどの興奮に満ちていた。
◆◆◆
心霊倶楽部の部室にて。
「ねぇ、えりな〜一緒に行きましょうよ~」
「行ってあげたいのはやまやまなんだけど、家のパン屋の手伝いがあるの。ごめんねしのちゃん」
しのの親友である青々とした緑色の髪を後ろで黄色のシュシュでまとめてお団子にしている少女、
「家の手伝いじゃ仕方ないですね。でも、どうしましょう。先輩方は用事があって行けないって言われてしまいましたし……」
もう使われていない元教室の部室内を見渡すしのの目に楽しそうに談笑している三人の男女が映ると彼女は形の良い唇の口角を上げ、三人の元へと近づいた。
「あなた達、今日は何か予定はありますか?」
突然話しかけられた三人の少年少女はきょとんとした顔で綺麗な笑顔で目の前に立つしのを見上げた。
「おれは別に……」
「あたしも特にないよ、しの様!!」と元気に応える長い茶髪に白いカチューシャを付けた猫目の少女。
「えと、俺は……(しの先輩からのお誘い、このビックウェーブに乗るしかないじゃないか! だが行先が最近怪事件が起きた中央公園って地獄じゃねぇかよ!!)」
「あれ? 哉太は今日これから家族と外食に行くんじゃなかったっけ?」
遠慮がちに手を挙げようとした黒髪のショートヘアに左頬のホクロが特徴的な少年、
「あ……そーいえばそうだった……家で兄ちゃん達待ってたことすっかり忘れてた……(助かった……かも……)」
「決まりですね! では、今日の夜八時に中央公園前集合です!」
◆◆◆
「遅れてごめん〜」
「空ちおっそーい! 女の子を待たせるなんて言語道断よ?」
「ごめんて。父さんにコンビニに行くって嘘ついて抜け出してきたんだから」
少し遅れてやってきた空に茶髪の少女、
「まあまあひまりさん。空くんも来たことですし、さ、行きましょうか」
しのの声に三人は、昼間は子どもたちで賑わう公園だが、暗くなるなり昼間とは打って変わった不気味な公園に足を踏み入れた。
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