第一話~怪異狩りに目覚めちゃった日②
***
ジリジリと照りつける太陽の下、見慣れた鳥居をくぐり抜け、その奥にある『櫻木』と書かれた表札を出している家に入っていった。
「ただいま~」
「帰ったぞ」
「あ、お帰り~アイス買ってきたけど、食べる?」
流架と輝の声に奥からパタパタと足音が聞こえ、流架と似た風貌の男がひょっこりと顔を出し、問うてきた。毛先が茶色の金髪に流架と同じ銀色の瞳を持っている。
「ヤッター! アイス~」
「手、洗ってからだぞ!」
「分かってるって♪」
洗面所に向かっていく二人の背中を見ながら男、
出流は流架とは二つ違いの弟だ。普段はしっかりしているが、気が抜けるとマイペースで天然なところが出てしまうことがある。
「ん~やっぱ夏のアイスは最高だよな!」
「さいこー!」
「そういえば、じいちゃんが亡くなってもう二五年かぁ……」
流架はチョコミント味のアイス、輝はソーダ味の棒アイスキャンディー、そして出流はレモン味のかき氷アイスと皆それぞれ色んなアイスを三人で食べていると出流がポツリと言葉を漏らした。
「俺たちも朝その話してたよ」
「おじいちゃんが生きてた頃はこの時期くらいの時期になったら、よく俺と流架兄さんで川遊びとかしたよね。確か輝兄さんが来る前だったから……その時に
出流の口から言葉が続かず、黙り込んだ。流架を見るとわずかに顔をしかめていた。重い沈黙が辺りを包み、セミの鳴き声だけが辺りに木霊する。
「ごめん。流架兄さん……」
「別に……気にしてないから」
沈黙に耐えられないかのように出流が謝罪の言葉を口にするが会話はそれっきり続かなかった。
「たく……」
見かねた輝が出流が煎れてくれた麦茶の入っていたコップの氷を一、二個手で掬い上げると流架の着ている服の襟元から氷を入れた。
「ヒィ! 輝! おまえ今何入れた!?」
「氷」
「氷って……何で氷入れたんだよ!?」
「おいらこんな長くて重苦しい沈黙耐えられない!」
「……悪かったよ」
そんな二人のやり取りを見ていた出流はクスッと笑いを漏らすと立ち上がった。
「さてと、アイスも食べ終わったことだし流架兄さんと輝兄さん。墓掃除手伝ってね」
「え……墓掃除って裏山にある墓、全部?」
「そう、全部」
「マジ?」
「マジ! ほらほら、子供たちが帰ってくる前にとっとと終わらせるよ!」
「「ヘーーイ」」
出流に着いていき、掃除道具を倉から出し、裏山に向かって歩き出すと前方に謎の人物が音もなく降り立った。
人形のように白い肌、灰銀色の髪、鋭い紺色の瞳の若い男だった。
「誰だおまえ!?」
「もしかして参拝者か?」
「う~ん、違うと思うけど……?」
「黙れ。下等な人間風情が。お前らには関係ない」
「はぁ!? お前だって人間だろ!」
「違うな、俺の名は
京と名乗った男が呪文を唱えると突如とし黒い煙が地面から吹き出し、人の三倍ぐらいの大きさで背中に複数の触手が生えた巨大な怪物へと姿を変える。
「行け、怪異!!」
命令に応えるように『怪異』と呼ばれた怪物が襲いかかってきた。
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