今さら自らを変えようとしてはならない(ドラッカー)

---

今さら自らを変えようとしてはならない。うまくいくわけがない。自らの得意とする仕事の仕方を向上させていかなければならない。

---

ドラッカー『プロフェッショナルの条件』


吉本隆明も同じようなことを言っている


---

僕は、自分でもあんまり好きじゃねえなってところは、もうほっといいと思うんですよ。それで、ちょっとでもいいから「これは長所だ」と思えるところだけ、伸ばしていけばいいんじゃないかとおもいますね。いつも言うことなんですが、結局、靴屋さんでも作家でも同じで、10年やれば誰でも一丁前になるんです。だから、10年やればいいんですよ。それだけでいい。

---

吉本隆明『悪人正機』


今の時代だと、こういう発言はとても消極的なものに聞こえる。「自分に勝手に限界を引かないで、いろんなことにチャレンジしなさい」というのが令和式のお説教ではないだろうか。


しかしそうしたお説教を会社の上司が部下にするとしたら、ドラッカー風の言い方をするなら、組織としてのマネジメントの失敗のツケを個人に押しつけているだけだと思う。その人が得意なことをやらせた方が、組織としての成果は向上するに決まっている。逆に、苦手なことをやらせても成果は出ない。だから、自分を変えるなんて馬鹿げたことなのだ。それぞれの人にできることは限られている。人間はスーパーマンではない。スーパーマンを前提とする組織は、マネジメントに失敗しているのだ。


自分を変えなくていいというのは、成長しなくていいということではない。たとえば、優れた小説家は新しい小説を書くたびに、何か新しい試みを取り入れようとするだろう。だとしても、それが小説であることには変わりない。一方、小説家がタレントになったり経営者になったりしようとしても失敗するだろう。それまでの自分のあり方を裏切るような自分の変え方をしてはいけないのだ。自分に忠実であれ、という風にも言い換えられると思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る