ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ(吉増剛造)
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ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ
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吉増剛造「疾走詩編」『現代詩文庫 吉増剛造詩集』所収
高校生のとき好きだった詩で、今も、調子の悪いときに音読すると日常のいろんなことがどうでもよくなって元気になれる。
わたしは今、元気ないので、もう少し引用してみよう。
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ぼくの宇宙は命令形で武装した
この内面から湧きあがる声よ
枕詞の無限に岩バシル連禱のように
梓弓、オシテ狂気を蒸発せしめる
無類の推力を神ナシに保証せよ
(…中略…)
ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ
ぼくの眼は千の性器に裂けて浮游せよ
(…中略…)
朝だ!
走れ
窓際に走りよると
この二階の下に潮が満ちてきている
岩バシル
影ハシル、このトーキョー
精神走る
走る! 悲鳴の系統図
この地獄
新宿から神田へ
(…中略…)
燃えろ! 分裂魔術疾走律
燃えろ! 快楽狂気淵少女、クチビル
燃えろ! 太陽ヲマワス劣悪棍棒!
神、燃えろ、ほら目の前に、皮膚ガソリン!
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意味がわからない? どう読めばいいかわからない?
それで正しい。意味なんてお上品なものを置き去りにして全力疾走するのが初期の吉増剛造の詩なのだ。
ちなみに、実際には「!」はすべて右に傾いています。吉増剛造の使うエクスクラメーションマークは、それ自体が凶器みたいにざっくりと本のページにめり込んでいる。吉増剛造の詩集は今のところ1冊も電子書籍化されていない。後期の作品になるほど書き方がどんどん先鋭的になっていって、余白の使い方や行分けの仕方、ルビの振り方などなど、電子書籍ではまったく再現不可能な域に達している。吉増剛造の詩はたんなる「情報」ではなくて、詩人が自らの肉体を駆使して生み出した「物質」なのだ。
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