「コスパコスパっていうなら死ぬのが一番コスパがいい(大意)」(菊地成孔)

かつてやっていた菊地さんの深夜ラジオで聞いた言葉で、確かこんなような趣旨の発言だったと思う。調べてみると他のところでも似たようなことを言っているみたいだ(https://www.cinra.net/article/interview-202002-kikuchinaruyoshi_kawrk)。ちょっとそこから引用してみる。


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菊地:僕は高いワインを入れたとき、必ずその場にいるやつに分けるんです。血の7杯(笑)のうち、1杯は必ずソムリエに飲ませます。そこにも浪費の快感がある。バンドのメンバーなんかのなかには、ワインなんか飲んだことがないから、味がまったくわからないというやつも混じっていたりするんですけど、それもまた楽しいんですよね。


―味がわからない人には飲ませてもしょうがないってなってしまうと……。


菊地:それはコスパの話ですよね。コスパなんて本当にどうでもいいですよ。コストパフォーマンスを突き詰めると、人は死んでしまうしかないんですよね。人が生きていることが一番コスパが悪いので。人間が生きてるって感じるのは、コスパが悪いときですから。

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死ぬのがコスパがいいのは、人生にはリスクがあるから。60歳まで順風満帆で生きてきても、61歳でえげつないほどの悲劇に巻き込まれることだってありうる。今死んでおけば、そんなリスクを最小限に抑えることができる。これは逆の言い方もできる。コスパばかり気にして生きているのは、死んでいるのと同じ事だ、と。


コスパのことばかり考えているうちに、生きていることがどんどん窮屈で、重苦しいものになってしまう。それは、コスパに縛られることで、自分が本当は何をしたいのかが見えなくなってしまうからだろう。気がついたら、自分は絶対こんな風にはなりたくないと子どものころ嫌っていたタイプの大人になってしまっていたりする。小さい子どもならコスパなんて考えずに、今やりたいことをその場でやるだろう。


「コスパのよい選択肢を選べること」が大人の定義だとしたら悲しすぎる。それじゃAIと同じだ。ライフハックに熱中する大人よりも、コスパ無視して遊べる大人に憧れる。

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