第3話 男友達ってめんどくさいね

 「なにか用でもあんのかよ、雪乃ゆきの


 彼は雪乃誠ゆきのまこと。いわゆる僕の親友……というものに男子の中で最も近しい人間である。こいつは明るく、僕とは正反対の性格ではあるが、最初にできた男友達だ。人柄的にも僕が好きなタイプだったので、去年からずっと仲良くしている。陽キャではあるが今のところ男子の中では一番仲がいい。


 「いやぁちょっと、なんかお前の話が聞こえてな、いくつか質問をさせてもら

 う。何も聞かずに答えろ。まず最初に……お前らって連絡先交換してる?」

 「いや?」

 「数人のグループで遊んだりして、そこで二人で話したりは?」

 「無いぞ? そもそも僕は誰かと遊んだことないし、ネトゲ以外は」

 「なんか、その質問ちょっと変な感じしない?」


 そうだ美香、言ってやれ! それはそうと、なんでこいつはこんなことを聞いているんだ? 別に連絡を交換してなくても一緒に出掛けるくらい良いだろ。


 「あのな加藤、そんな連絡先も交換してないような奴らが、最初から二人きりで出

 かけるとか、順序というものがおかしいと思わないか?」

 「思わないな。一般的にはそうかもしれないが、人と関わって来なかった僕にそん

 な順序とかいう難しいことはは分からない!」

 「難しいことて……お前は子供か。てか、最近それを言い訳にして誤魔化すの多

 くなってきたよな、お前。毎回堂々とそんなこと言って恥ずかしくないんか」

 「たしかに最近よく聞くかも!」

 「ごめん、それ二・三回しか言ってないよ? 今の合わせても。あと美香まで言わ

 なくていいからね?」


 なに? 数回言っただけでも多くなってきたとか言うの? それっておかしくない? 本当に人と関わってなかったから周りとは常識が違うとかあるの?


 「あれ? そんなんだっけ? ごめん勘違いしてたわ!」

 「よくそんな元気に謝れるよな、もはや怖いわ……てか、いつまで居るんだよお

 前は」

 「別に一緒に話してたっていいだろ!」

 「お前と話してたらいつの間にか、話してたことが全て、どこかに行ってしまったかのように消えてんだよ!」 

 「あっ、そういえば」


 そういって雪乃は、陽キャ男子の群れの中に入り込んでいった。本当に何を話していたんだという位に話が飛んでたな。そうしてあいつが消えたことを確認して、話の途中をしようとすると、美香が話し始めた。


 「ねぇ……傑君、さっきの話なんだけどさ……」

 「うん……」


 なぜかは知らんが緊張感がすごい。たぶんだが、美香がすごい真剣な顔でこっちを見ながら話しているからなんだろうな。威圧感とはまた違うなにかが感じられる。


 「……その……どこに行くの!? 映画館? それとも水族館? 公園でピクニックとかもしたいかも! あとは……」

 「ちょ、ちょっとまって? それは一緒に出掛けるということで……いいんだよね?」


 質問の答えの前に行く場所の候補が出てくるとは予想してなかった。順序がおかしくないか? ……なんか、この言葉を聞いたことある気がするのは気のせいか? いやそんなことより、さっきから美香、なんかすごいワクワクしてる感あるし、行きたいと態度で示しているようだ。これで行かないとか言われたらまた人間不信になりそうなくらいには。


 「うん! だって傑君から誘ってくれるだなん、思ってなかったもん! 私も、

 いつか傑君と出掛けたりしたいと思ってたんだよね!」

 「そうなの? じゃあ、ちょうどよかったかな。断られて雪乃に笑われことを覚悟

 してたから本当によかった……っていうか、もうあと三分で授業始まるじゃん!」

 「ホントだ! いつの間にかあの二人も帰ってきてるし!」

 「じゃあ、また後で話そうか」

 「うん! またあとで!」


 そういって美香は自分の席に戻っていった。席の近いあの二人には、何か文句を様子。おそらく声をかけてくれなかったからだろう。あの三人はいつも一緒にいるから、二人で話していたことに、少し焼きもちを焼いてしまったのかもしれない。まあ何はともあれ、美香と出掛けることは決定したし、今から予定を決めることから楽しみだ。なんならそれだけで満足できそうだ。


 僕はそんなことを思いながら、一限目で使うものが後ろのロッカーに置いてあることに気づき、先生の前に立ち、少しの間叱られたのだった。

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恋愛経験のない僕はあの子が好きだが別に恋愛的な意味はない。 ちぇむ @mui--1227

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