二十六 口伝の儀式(裏陰)
黒いマントを
「この
ヒミコンはクロスの誘導に従って左手の人差し指と親指を立てピストルの形を作った。
クロスはヒミコンの左側に立つ。そして耳元に囁くように裏陰咒を唱え始めた。
体内に脳内に骨の髄に。クロスの声がダイレクトに響いて染み渡る。ヒミコンも呼応して後を辿る。
左手の人差し指と親指はみるみるうちに赤黒いピストルの形へと変容した。
ゲイルが説明する。
「この
ラストオイルとは
トレジャンに対して粗悪な感情を向けフェイトギアを汚そうとする生怨霊を生み出した『
イレーズが不気味に笑う。
「要は。裏陰のラストオイルは地獄行きの呪術ってこと。フェイトギアが朽ち果てたとき対象者は
ゲイルが説明を続ける。
「ラストオイルを噴射されると対象者のフェイトギアは徐々に錆びてついていく。
フィックスオイルの場合。噴射される分量に比例して
しかし。ラストオイルはシステムが違う。分量は関係ない。朽ち果てるまでの年月を指定する。
例えば三年設定ならば三年かけてフェイトギアが錆びついていく。三十年設定にすればゆっくりと
イレーズが補足する。
「年月の長短はそれぞれの罪過によって判断される。対象者に
悪質な処罰対象者には複数回ラストオイルが噴射される場合もある。その場合。設定年数が残っていてもカウントが
ヒミコンの役割は簡単なこと。指令が下ればそれに従う。……情を捨てて
クロスが締めくくる。
「ヒミコンはこれから生身の
処罰対象者が誰であるかは神霊獣ライアンが善と悪を見破る呪術『判別眼』をもって決定する。薄汚い本性を見破り暴いて知らせてくれる。
ライアンが牙と敵意を剥き出しにしたとき。そいつは処罰対象者に確定する。決して! 感情移入をしてはならない。
……いいかァ? 情を捨てろ! 相棒と力を合わせて任務を
「はいっ!」
ヒミコンは冷徹冷厳なる世界観に足がすくんだ。
シップが右手を掲げる。
「これにて、儀式は終了とする」
ヒミコンは慌てて質問をする。
「あの! ラストオイルの実践訓練はないのですか? 処罰対象者が明かされてから、ということなのでしょうか?」
ゲイルが淡々と答える。
「そうだ。ライアンの判別眼によってラストオイルの処罰対象者が明らかにされたとき。任務遂行の指令が
トレジャンが十七歳までに関係した悪霊怨霊のすべては
そしてトレジャンが十八歳になった今。処罰対象者は霊体から生身の
「はい! やっと、やっと、やっと! お役に立てるのかと思うと嬉しいです! 精一杯頑張ります!
ヒミコンは突然しゃくり上げて
「わ、鼻水、汚い」
「ハハ、ひどい顔だ」
「笑えるなァ」
「愉快、愉快」
「バウ!」
藍方星は瑠璃色に
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