二十 十八歳になるまでに②
ゲイルが現れた。
ゲイルはライアンの首筋をふわりと撫でると一足飛びに
ゲイルはライアンの背に跨ったまま説明を始めた。
「ヒミコンよく聞くのだ。
トレジャンに襲い来る悪霊の
だが。
ヒミコンは悪霊怨霊だけでなく生身の人間が敵となるという初めての情報に
ゲイルは続ける。
「霊体は人間が十七歳まででないと魂を乗っ取ることができない。ゆえに十八歳からは攻撃方法が変わる。
生身の
そんな
ヒミコンは問う。
「世で言うところの極悪非道なる人間が生きた怨霊を生み出しているのですか?」
ゲイルは首を横に振る。
「いや、そうとも限らない。
ゆえに誰でも怨念の塊である『生怨霊』を生み出してしまう可能性があるといえる。しかしながら。それらすべてがトレジャンの敵というわけではない」
ヒミコンはさらに問う。
「ターゲットは定まっていると?」
ゲイルは頷く。
「そうだ。我らが
その中でも『先天性』マニピュレーターは特段に腹黒い。飛びぬけて
性根の腐ったマニピュレーターのフェイトギアは
ヒミコンは混乱しながらも頭の中を必死に整理する。
……要するに。十七歳までと十八歳からでは、襲い来る霊体のタイプが変わるということだ。
先天性マニピュレーターという
それなのに私ときたら!
肝心のトレジャンのフェイトギアを
私の役割は、トレジャン専属シャーマンだ。しかしこのままでは任務をひとつも与えられぬまま、役に立てぬまま、ここから蹴り落とされて終わってしまう。お役御免のお祓い箱確定だ。
……そんなのは嫌だ!
何が何でもトレジャンが十八歳になるまでにフェイトギアを透視して『特別な呪術』を口伝してもらわなければならない。
そして悪霊怨霊製造機である
ゲイルが華麗に笑った。
「ご名答。少しは賢くなったようだな。
ヒミコンが選ばれし者になれたとき。
マニピュレーターとは『善人を演じる悪人』であり、綺語を並べ立てて人を欺く『偽善者』であり、周囲を無遠慮に
善を
トレジャンの役に立ちたいのであればフェイトギアの感応透視は
「はい! さらに修練いたします!」
イレーズは皮肉を込めて言葉を続ける。
「あ、そうそう、ついでに。ゲイルのようにライアンを乗りこなせるよう訓練しておくように。この先、運よく
まあ、トレジャンの十八歳の誕生日までに間に合えば? だけどね? そもそも別にあんたなんか居ても居なくても変わらないしさ。役立たずの雑用係の女なんて
ヒミコンはイレーズの本音に思わず凍りつく。
「クク、そんなに
薄ら笑いを浮かべるイレーズは美しい瞳の奥に感情を宿していない。あまりに無情で冷たくて。恐怖は
ヒミコンは強く思う。
そもそも今の今まで一度たりともトレジャンを護れていない。だから何としてでもトレジャンの役に立ちたい! 今やトレジャンは私の宝でもあるのだ!
……こん
「トレジャンのため! が、ん、ば、り、ます!!」
ガニ股に足を開いて踏ん張って、
男らしく気合の入ったヒミコンの立ち姿に、ゲイルとイレーズは思わず目を丸くして顔を見合わせた。あまりに
ふたりは
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