十六 イレーズのレクチャー
露見の泉のほとりではヒミコンが百面相をしている。
険しい顔をして水中を覗き込んだ。そうかと思えばニヤニヤと笑う。眉間にしわを寄せた。思い出し笑いをした。とにかく何やら不審なのだ。
イレーズが現れた。
「鬼神霊獣マニアのヒミコン。思い出し笑いなんかして
すでにイレーズの皮肉には慣れている。
「すっ、すみません! 先日の十二鬼神と神霊獣たちの勇壮な姿を思い出すと! ついついニヤけてしまって……。ふふっ、ふふふふ……。あっ! なにかご用命ですか?」
イレーズはヒミコンの忍び笑いにドン引きだ。
「あ。ああ、そうだった。気味悪くて忘れるところだった。物凄ーく不本意なんだけどさ。シップからの命令で仕方なく来たんだ」
「何でしょう?」
「だから。ヒミコンの指導に来たんだよ。面倒だし嫌だけど。とりあえず何か質問ある? 無ければすぐに戻るからさ。無いよね? じゃあ……」
「待ってくださいっ! ありますっ! 質問ありますっ!」ヒミコンの顔が、ぱあっと輝いた。
「やったあっ! たくさん、たくさん、たくさんっ! 質問ありますっ!」
イレーズは
「よろしくお願いしますっ!」
「ふう……。じゃあ
ヒミコンは瞳を輝かす。
……すごいっ! わかりやすいっ! さすが
イレーズの講義は、渋々とは思えぬほどに素晴らしかった。宇宙一と称される天才の講義には
しかし
「ああ、もう無理! 限界! 喋りすぎた。 低レベルの相手は疲れた。……じゃあね」
イレーズは去って行った。
「ありがとうございました!」ヒミコンは深々と頭を下げた。
……大満足だ! 講義合間の雑談までもが面白かった!
雑談では極等万能祭司四人衆の役割や個性に触れることができた。
『ゲイル』は天上界随一のモテ男なのだそうだ。
鬼神や神霊獣の主なる使い手ではないけれど。
強い陽光のオーラは心の深奥までも明るく照らす。多くの者たちに希望や癒しを与えている。
『シップ』は極等万能祭司四人衆の中では一番の年長者であり。三千大千世界の主『未來王』の極等級祭司の一番弟子なのだそうだ。
ゲイルもクロスもイレーズもシップから徹底した教育指導を
優れた指導者であり、高貴なる品格を具えた人格者であり、抜群のバランス感覚を有する『中道』を極めた
ワガママ気ままな極等万能祭司四人衆をまとめ上げることができる無二なる存在こそがシップなのだという。
『クロス』は二メートル十五センチの長身だ。どす黒いオーラを放って凄まじい威圧感を
怒りを買えば圧倒的な破壊パワーで何もかもが木っ端微塵の灰と化す。決して敵にしてはいけない相手だよ。そう言ってイレーズは薄笑いを浮かべた。
しかし一旦信頼されて認められれば、どこまでも愛情深くて優しいのだそうだ。
さらには『選ばれし者』に
パワーと知性を兼ね備えた実力者こそがクロスなのだという。
気難しいイレーズが穏やかな表情で言っていた。
「シップもゲイルもクロスも冷厳に見えるけれど。実はとことん優しくて。ユーモアがあって。気さくで。頼もしい兄貴分的存在だよ。俺にとっては数少ない大事な人たちなんだ」
さらにイレーズは自分自身のことを客観的に評した。
「驚くくらい冷たいよ? 基本的にトレジャン以外には興味がないんだ」
……ヒミコンはクロスの言葉を思い出す。
イレーズは超天才であると。頭脳も美貌も
極等万能祭司四人衆のシャーマンとしての
同時に。
そして藍方星の荘厳なる世界観に
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