十四 露見の泉
ヒミコンは暇さえあれば露見の泉を覗き込んで訓練をしている。今日もひたすらに水中を眺めていた。
もはや雑用と修練の時間を除けば。露見の泉のほとりにたたずむ毎日なのだ。
……それにしても、汚い。
私が生前に身を置いていた『人間界』というところは、これほどまでに強欲、傲慢、
これでは餓鬼やら畜生やら悪魔とやらと大差ないのではないか。もはや人間も悪しき鬼畜と同類なのではないか。
……ああ、恐ろしい。なんて怖いの。人間って生命体は。
クロスとイレーズが現れた。
「なァ? きったねえだろ? 妬み、
「人間の本性ほど定まらなくて。コロコロ変わって。自分都合で
「さらになァ。死者の怨念よりも生きている人間の怨念のほうが遥かに強い。人間の悪意の
「トレジャンのフェイトギアは輝いていて美しい。だから天上界からの守りが強大であり強運だ。怨霊たちは
ヒミコンは興奮して叫んだ。
「あのっ! トレジャンは大丈夫なのですか? 露見の泉に映る生霊や怨霊たちを見ましたが、それはそれは恐ろしい
聡明で清らかなトレジャンが泣いて怖がって
クロスとイレーズはきょとんとして顔を見合わせた。
「間抜け女め。こんな怨霊なんて
「そ。瞬殺」
ケロリと言い放たれて、ヒミコンは疑問が浮かぶ。
「えっと。では私の役割は何なのでしょう? 極等万能祭司の皆さんが馬鹿みたいにお強いのですから。そもそも私など必要ないってことですよね?」
「まあ確かに。極等級の祭司が四人もいるからなァ。指先ひとつで事は足りているなァ」
「そもそも。あんたの出る幕なんてないよ」
「じゃあ私は! トレジャン専属なんて名ばかりのダミー
クロスが
「クククッ! 厚かましくて笑えるなァ。俺たちの宝である大切なトレジャンだぞ? ヒミコンを中心として警護をさせようなどと
しかし、使命は与えられるぜェ? 『選ばれし者』になれればなァ!」
イレーズは無表情のまま呟く。
「トレジャンのフェイトギアが見えないうちは単なる『役立たず』ってこと」
ふたりは、すうっと消え去った。
……悔しいっ! だけど何ひとつ言い返せなかった。自分の無能さが身に染みて! ただただ悔しい。
あれこれ
ムキィーッ! やってやるわよ!
ヒミコンは
前のめりになり過ぎて。露見の泉の赤黒く濁った水の中に何度も落ちそうになった。
血走った眼差しは日に日に切迫してギラついている
極等万能祭司四人衆は豪華なアームチェアーに腰掛けて優雅に紅茶をすすっていた。
まるでコメディーアニメのようなガチャガチャした見習いシャーマンは、相変わらず騒がしい。
しかしなぜだか不思議と。この落ち着きのない情緒不安定のヒミコンから目が離せない。
駄目すぎて。馬鹿すぎて。
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