四 大宇宙の変革

 秘匿されている事実として。もうすでに新時代は到来している。

 

 近過去において。三千さんぜん大千世界だいせんせかいあるじは世代交代が為された。密やかに新しい時代への大変革が実行されていた。急激な時代の変遷へんせんあらがうことができず大宇宙マクロコスモスに於いて新陳代謝がうながされた。つまりは『未來みらいおう時代』へと変転移行しているのだ。

 

 まさに欣快きんかいである。

 極等万能祭司四人衆は天部の天人天衆や八百万の神々と共に歓喜勇躍した。歓天かんてん喜地きちなる慶事でありほの暗い現世に光芒が差し込んだ。明るい予見予兆がたぎった。


 即座に時代遅れの凝り固まった先入観の払拭ふっしょくが始まった。

 いにしえからの佳き伝統や宝物ほうもつは継承して大切に保護プロテクションする。しかしながら近未来に適応しない思想や固定観念オブセッション淘汰とうたされる方向へと力強く進み始めた。

 男尊女卑。ハラスメント。古めかしい既成概念。そんなものはもう流行らない。

 現世は革新的情報化社会へ移行した。タイムラグをしょうじさせずに世界中と繋がれるデジタル社会なのである。

 もはや封建的思想など時代錯誤もはなはだしい。未來を見据える賢い若者たちに陳腐ちんぷ苔状こけじょうなど通用しない。

 

 四大弟子である極等万能祭司四人衆を前にして、未來王がおおせになった。

 『内天院から見える藍方らんぽうせいは少し地球に似ているのですよ。天上界と地球は同じ空で繋がっています。万里一ばんりいっくうです。

 我らは『大道だいどう不器ふき』となって、自我エゴを排除し、差別や限定などせず、与え続けることが使命です。

 学び働き耕して。自己を律し研鑽し。懸命に努めている人間はとても愛おしい存在です。藻掻いて足掻いて頑張っている方々の未來が輝くように。せめて妥当だとうに近づくように。陰ながら応援させていただきましょう。

 有機体のために善呪術を行使しても決してあがめられてはいけません。過剰にたたえられる必要などないのです。そもそも我らは大層なことなどしていないのです。

 痛みや悲しみ。暑さや寒さ。飢えや渇きにもだえ苦しみながら。日々を生きている人間ヒト森羅万象しんらばんしょうこそが尊いのだと知るのです。

 ですから叶えや救いや癒しの呪術の行使は陰徳いんとく陽報ようほうでなくてはなりません。善行ぜんぎょうこそ。気づかれないようにひっそりと! ですよ』

 「だく!」

 極等万能祭司四人衆は整列し声をそろえて未來王に跪拝きはいした。

 

 『ひょうよう』の役割を与えられているのはゲイルとシップ。主に叶えの呪術を行使する。

 『いん』の役割を与えられているのはクロスとイレーズ。主に処罰の呪術を行使する。

 

 そして最近、この藍方星に新たな住人ヒミコンが加わった。

 ヒミコンは『選ばれし者』になる修行中である。修行を兼ねながら雑用係として彼らに容赦なくきたえられ、こき使われている。

 極等万能祭司四人衆の疾風しっぷうの如きペースに振り回されながら。ありとあらゆる無理難題に悲鳴を上げながら。髪を振り乱してボロボロになるまでひたすらに耐え忍んで訓練トレーニングを重ねている。赤い作務衣さむえを着て雑用をこなしている。

 この雑用係のヒミコンが藍方星の知られざる日常を明らかにすることだろう。

 

 そしてしばしの年月をさかのぼって、大宇宙マクロコスモスのストーリーは始まる……。

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