第3話
副隊長クレイドから解放された俺は、急いでアリアのもとに戻る。
「アリア、待たせてごめん」
「ヒヒン!ブルブル(遅い!もうお腹ペコペコよ)」
アクトの様子を見ていたこともあり、かなり時間が経ってしまった。いまだに馬車に繋がれている馬はアリアだけになってしまった。
申し訳なさでいっぱいになりながら、手早くアリアの鎧を外していく。先ほどアクトが連れて行かれたほうへ、鎧を外し終え身軽になったアリアを引いていく。
「こっちに馬たちが連れて行かれたと思ったんだが……」
「おーい、ギーツ!こっちだ、こっち」
アクトを連れて行った御者兵士の鎧を着た男が、こちらに向かって大きく手を振っている。こちらからも手を振り返すと、アリアを引いて男のほうへ向かう。
「さっきはありがとな、ギーツ。助かったぜ」
「おう、困ったときはお互い様ってやつだろ。で、馬たちはこっちでいいのか?」
「ああ。この先に囲いがあってな、馬たちは中でゆっくりしてもらってる。飼い葉と水を入れる箱が設置されてるから、あとでギーツもアリア嬢の分を持ってきてやってくれや」
「なるほどね。ありがとう」
俺は男に礼を言うと、アリアを引いて示された方へ向かう。すると、俺の胸の高さくらいの囲いが見えてきた。中には先ほどのアクトや、他の馬の姿も見える。
囲いの入り口に立つ兵士に近づいていくと、笑顔を向けられる。
「ようやく来たな。アリア嬢が最後だ」
「悪ぃ悪ぃ。聞いてるだろ、アクトの様子を見てたんだよ」
「大事なくてよかったぜ。砦までもう少しとはいえ、馬車1台分の物資を人手で運ぶのは骨だからな」
兵士が開けてくれた入り口にアリアを入れつつ、言葉を返す。
「だけど、いざとなったら抱えてでも持っていくしかないだろ。勇者さま方が俺らの物資を待ってるんだからさ」
「ははっ、違いない」
アリアを囲いに入れると、兵士が入り口を閉めてくれた。
「さ、アリア。ここが今日の宿だ。明日に備えてゆっくりしてくれ」
「ヒヒン?(ギーツもちゃんと休むのよ?)」
「わかってるわかってる。……よっと、じゃ後でな」
アリアの注意に軽く頷くと、囲いに足をかけて外に出る。そんな俺に呆れたような視線を向けていたアリアだったが、俺が手を振ると諦めたように首を降り、囲いの奥に歩いて行った。
アリアを見送った俺は、入り口の兵士への挨拶もそこそこに馬車へ戻る。道中、声をかけてくれる顔見知りの兵士たちに言葉を返しつつ、馬車から飼い葉と水を降ろして囲いに設置された箱に入れる。
「さて、これでよしっと。んじゃ俺も飯もらいにいくかな」
飼い葉と水を運んでいる間、顔見知りの兵士に教わった食堂に向かう。食堂といっても、調理場と椅子と机を並べただけの場所だが。
調理場で作られた食事を受け取り、空いている場所に座る。アクトやアリアの面倒を見ていた分、食べ始めたのが遅い。のんびり食べていると調理当番の迷惑になるので、急いで食べたいのだが、顔見知りの兵士たちが通りかかるたびに話しかけてくるので、食事が進まない。
「おーい、ギーツ。そろそろ片付けたいんだけど?」
「あ、あとちょっと待ってくれ!……おい!お前らのせいで迷惑かけちまったじゃないか」
「いやー、ギーツを見たら話したくなるんだよね」
1人の言葉に周りにいた数人が深く頷く。苛立ちながら片手で虫を払うような仕草をすると、周りにいた顔見知りの兵士たちが足早に立ち去っていく。
「ったく、俺はおもちゃじゃねぇっての」
俺は急いで食べ、空になった食器を下げた。
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