さよならする準備

暗点

僕は土砂降りの中傘もささずに帰っていた。唯一雨が嬉しかったことは涙を誤魔化せたからである。数年寄り添った人と別れを言い出してぽっかりと穴が開いたようだった。そしてあの言葉で良かったのだろうかと未だに考えていた。友達に戻るということだ。あの時の僕はまだこの意味を考えていなかったと思う。多分もう戻れない事は分かっていてもそうしたかったのだろう。枯れ果てていた花が花弁を再生することがないように。

家について色々と考え込んでしまった。家にあるものは、ほたるの物もあったので見たくはなかった。そうして瓶の酒を飲みほした。悲しいことを一時的に忘れられるので良かった。なんだか今日は眠れないような感じだったので酒に身を任せようとしていた。テレビ番組は面白いやつがやっていないので冷蔵庫から新しい瓶を持ってきた。ここ二週間ろくに眠れずにいたからストレスなどで酒の量も日に日に増してた。多分ほたるもそんな感じだったのだろう。だから今から雨が降り出しそうな曇り空のような顔をしていたのだろう。それでも僕は一緒に時を過ごしたかった。そんな顔を見てしまったらこの答えを考え始めて一番最適解を見つけることが最後に僕が行ったことだ。色々考えあがいてもがいて出した答えが正しかったなんてわかるはずもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る