世界が終末を迎えて魔物やゾンビで溢れたけど、唯一無二の雷スキルで生き残る ～崩壊して電気、ガス、水道が止まった街でも無限の電力で割とイージーモード～

第5話 招かれた拠点

　凜々の言う拠点とは倉庫風の建築物だった。世界がこうなった影響からか所々に亀裂が入っているものの、倒壊の恐れはなさそうに見える。少なくとも俺がいた雑居ビルよりはよほどいい。

「どうぞ、中へ」

「お邪魔します」

　招かれて中に入ると中は吹き抜けになっていて、ソファーやテレビにエアコンまで完備されている。

　また奥の方には簡易的な迷路があって、壁には多様なエアガンが並んでいた。

「凄いな……ここの持ち主は金持ちか」

「そうですよ。実は私の友達なんです」

　凜々はそう答えつつリュックを下ろして、ライフル銃を壁に戻した。

「いつか皆で本格的なサバゲーをするためにって友達が用意してくれたんです。女子チームですよ！」

「なるほど、それでか」

　迷路はサバゲーの練習をするためのもの。かなり本格的にやっていたんだな。

「廃棄予定のものを色々と譲って貰ったり、お金を出し合って武器を買い揃えたりして皆で完成させたんです。まぁ、友達の貢献が一番大きいんですけど」

「そんなところにお邪魔して悪いな」

「いえいえ、きっと友達も喜んで招いてくれますよ」

　にっこりと笑いかけてくれた。

「荷物は適当に置いて、ソファーで寛いでいてください。お茶を入れてきますから」

「あぁ、ありがと」

　凜々が倉庫の奥に消えるのを見届けてソファーに腰掛ける。座り慣れない感覚にすこしそわそわしつつ、目の前のテレビ周りに視線が向く。

　テレビデッキには平積みされた映画のパッケージとラジオ、テーブルには小物が置かれ、隅に可愛らしいシールが貼られていた。

「ここには電気が来てるんだな」

　見上げた証明は明るく、窓はすべてありもので塞がれている。夜に明かりが漏れないようにするためか。

「できました。どうぞ」

「ありがとう」

　湯気の立つ茶がのどを通り、その暖かさが体にしみた。

「そうだ！　映画でも見ますか？　いろいろありますよ！」

「あぁ、それは楽しみだけど。今はそれより話がしたいんだ」

「今後のこと、ですね」

「あぁ。折角、こうして会えたんだ。初めにちゃんと話し合って起きたいんだ」

　映画はその後でも遅くない。

「俺は……俺は両親を探したいと思ってる。でも、まずそれよりも優先しないと行けないことがあると思う」

「私も同じ気持ちです。両親に友達、見付けられるなら見付けたい」

　友達か。

「でも、その前にまず私たちが生き残るための備えが必要、ですよね？」

「あぁ、衣食住を揃えて、それからやっと人捜しが始められる。同じ意見でよかった」

「はい。一刻も早く家族や友達に会いたい気持ちはありますけど、比重を置くべきなのはどちらかは決まりました」

「急いては事をし損じるって言うしな。じゃあ、まずさしあたっては――」

　その時、突如として照明が消えて当たりが暗くなる。

「……電気の確保かな」

「そんなっ。待ってください、たぶん蓄電池です」

　携帯端末のライトを付け、ソファーから立って外へと向かう。

　外壁に沿って歩くと家庭用の蓄電池が置かれていた。

「どこも壊れているようには見えませんね。ということは、あぁー…電気がなくなっちゃいました……」

「蓄電器ってたしか発電は出来なかったよな？」

「はい。屋根にあるソーラーパネルから電力を流していたんですけど、あの光の爆発で壊れちゃったみたいで」

「そうか……」

　すこし思案して蓄電池に手を伸ばす。

「すこし離れててくれ」

「はい？　わかりました」

　凜々が離れたのを確認し、稲妻を纏って流し込む。

「わっ、わっ！　大丈夫なんですか？」

「さぁな。でも、携帯の充電は上手く行ったから、これもどうにかなるかも」

　なるべく低出力で稲妻を蓄電池に流し続けた。電気を貯めておけるにこしたことはないし、俺も色々と手間が省ける。だから頑張って稲妻を流し続けて十分ほどが経つ。

「とりあえずこんなもんでいいか」

「電源、入れてみますね」

　凜々が蓄電池を操作してくれたがうんともすんとも言わない。明かりがつく気配もなく、真っ暗なまま。

「お、おかしいですね……」

「これってもしかして……壊れた？」

　俺のせいかも。

「こ、こんなタイミングでですか？　さっきまでちゃんと使えてたのにぃ……あ」

「どうかした？」

「そう言えば友達がそろそろ買い換えないとって話してました。いつ寿命が尽きても可笑しくないって」

「そんなに年代物なのか、これ」

　俺のせいってだけじゃないかも。

「譲ってもらったものですから、もともと寿命は短かったんですけど……はぁ……」

　これから二人でがんばろうって時に出鼻を挫かれた気分だ。電気を貯めておけるとかなり便利だったんだけれど。

「……蓄電池ってどこで取り扱ってるんだ？」

「え？　あ、そうですね。家電量販店やホームセンターにあるはずです」

「……ホームセンターならこの近くにあったはず」

「もしかして」

「他にも必要なものが揃ってるはず」

「じゃあ！」

「あぁ、一緒に行こう」

　そう言うと凜々の表情に花が咲く。

「私、準備してきますね！」

　準備を整え、買ってきた食糧を腹に詰め、俺たちは拠点を後にした。