第21話 知らない天井

「ジークさん、ありがとう。」


彼岸との繋がりを閉じる。

すると、髪も元の藍色に戻る。


「俺も楽しかったよ。遠慮せず、また呼んでくれ。」


ジークさんに別れを告げた後、アクローマのいた場所を確認しに向かう。

残されているのは左足のみ。

他は雷で焼失したか、或いは…逃がした。


「生きているなら間違いなく復讐に来る。もっと強くならないと。」


ん?何か近づいてくる。


「うわっ、もう来た!」


爆発を調べるため、警備兵が駆けつけてきた。

僕はトヨヒサさんを抱えて見つからないよう高度を上げ飛行魔術で街へ向かう。

アイビィさんは兄さんを抱えて僕のだいぶ前を飛んでいる。

先程の爆発の時も障壁で兄さんを守ってくれていた。


「さすがはメラルダ家最強の護衛(魔王)だ!」


街に戻った僕らは、まだ残っている1つの問題のことでトヨヒサさんを問い詰める。


「小さな兄弟。おかげで助かりました。あの勇者と私は本当に相性が悪かった。」


感謝を伝えるトヨヒサ。


「うん、僕もありがとう。1対1になる時間を稼いでくれたおかげでジークさんとも仲良くなれた。でも…」


残された最も重要な問題。


「僕の兄さんはブルーノ・メラルダただ1人!さっきから兄弟とか言ってるけどなんのことなの!」


「ブルーノはアキヒサ・シホウインから術式を継承したのでしょう?であれば君達は私の先祖が遠き地で育んだ子孫ということになる。」


うんうん、と勝手に納得している。

血縁でもなんでもなく死後に本人から直接聞いたと説明したところで信じないだろうな。

僕と兄さんは顔を見合わせて諦めたように溜息をつく。


「わかったよ。でも僕があなたのことを兄と呼ぶことはありません。」


「構いません。血と心が繋がっていればそれで十分です。」


どちらも繋がっていないんだけどなぁ。


「ところで2人とも、どこかの教育機関には入っているのかい?」


兄さんは来年からルセイブル学院に入学が決まってる。


「僕はまだだね。入学の予定もない。」


「それならシャーラット魔術学園に来ないかい?」


僕が帝国の名門に?

渡りに船だな。家庭教師の授業を断る口実にもなる。

でも、カインがギルドで仕事を探してくれているし即決はできないな。


「メラルダに戻ってからの返事でもいい?」


「えぇ、良い返事を待ってます。」


トヨヒサさんと別れた後、翌日の学会も無事に終わり僕らは馬車でメラルダへの帰路につく。

色々あって疲弊していたのだろうか、帰宅してすぐ眠ってしまった。


翌朝、目を覚ました僕は見知らぬ天井を仰いでいた。


「よぉ、坊主。カインから話は聞いたぜ。うってつけのがあるんだ。」


どうやら僕は…


拉致されたようだ。

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