第15話 魔術学会

----魔術学会 当日----

イブル王国 ラダム領


学会は2日間かけて行われる。

会場は普段、舞台を公演している劇場を使用するようだ。

前方に大きなステージがあり、その正面に座席がずらりと並んでいる。


そろそろ兄さんの発表が始まる。

壊れたホムンクルスの代わりはメディがすることになった。


「続きまして、ブルーノ・メラルダ様の固有魔術の発表です。」


司会の一言で会場がざわめきだす。

魔術が開拓され研究が進んだこの時代に再現不可かつ未知の魔術を考案することなど容易ではない。

そのため、最近の学会は基本的に軍事利用や生活向上のための汎用的な魔術を披露する場となっている。

それらの魔術を国や研究塔が買い取って世界に普及させる。


「私の固有魔術は、指令系統の自動化です。」


舞台上、メディの手足にはびっしりと幾何学模様がタトゥーのように刻まれている。


「従来、ホムンクルスに命令を与え、動かす際は常に術者が操っていなければなりませんでした。」


そう言うと兄さんはメディに向かって用意していたナイフを投げる。


キィーーーーン


ナイフが直前で弾かれる。

メディの腕に刻まれた模様が輝きを放ち、障壁が展開されていた。

これを見た一部の魔術師は驚愕の表情を浮かべている。


「高名な魔術師である皆様ならお分かりかと思いますが、私とホムンクルスには魔術的なパスは繋がっておりません。」


完全な独立行動。


その後もナイフを何度か投げる。

ホムンクルスが障壁だけでなく風魔術や身体強化魔術を発動させ自動で迎撃する光景に会場は釘付けとなった。


兄さんが最後のナイフを投げる。

するとメディの眼が薄紫色に淡く光る。

その瞬間、ナイフの材質が先端から柄まで石になり落下した。


「い、今のって…」


「石化なんて複雑な術式まで刻まれているのか。」


会場のざわめきは、今起こった現象の異常さを物語っていた。


「ゴルゴーンめ、張り切りすぎじゃ魔眼まで使うとは…」


アイビィさんが呆れている。


「い、以上で発表を終了します。」


兄さんも慌てて発表を終了する。



----学会1日目終了後の発表者控え室---


「ロア!あんな術式が搭載されてるなんて聞いてないぞ!」


ソーマ様に同行していたロアも現在兄さんの控え室に来ている。


「じ、実は…」


どうやらゴルゴーン3体分のホムンクルスを作成する際に、本来の肉体の一部を素材に使用したらしい。


廃遺跡の件の後、ゴルゴーンの肉体はグレイス家の研究塔で治療している。

回復がかなり速かったから少し使わせてもらったそうだ。


「魂との親和性が高い故に、本来の肉体の機能が使えたのじゃな」


にわかには信じられないが実際に起きたことを否定はできない。


「じゃが、用心することだ。教会の勇者も来ておったからな。」


ゴルゴーンに呪詛をかけた勇者か。

兄さんの呪詛返しで苦しんでいるに違いない。

ということは…


「さっきの石化がゴルゴーンの魔眼だとバレてたら、呪詛返しの犯人が兄さんってこともバレるかも…」


コンコンコンッ


控え室のドアがノックされた。

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